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窓の外の景色を眺めていると、見覚えのあるマンションの前で車が止まった。

飲み会後に大野さんを送って
告白されて、キスをして
ここに来た事が別れるきっかけになったんだよな。

何かいろいろありすぎて、もうずいぶん前の事のように感じる。


「じゃ、ここで降りるから。」

「はい。あ、タクシー代は払います。いろいろ、すみませんでした。」

「ここまでは出すから、後はよろしく。」


大野さんはそう言って、タクシー代を俺に押しつけた。

会社からここまでの距離に比べたら、ここから俺ん家まではかなり近い。
結局、ほとんどタクシー代を払ってもらう事になってしまった。

タクシーから降りた大野さんが、何か言いたそうに振り向いたから
俺は運転手さんに断って、後部座席の窓を開けた。


「本当は送ってあげたいけど。」

「大丈夫ですよ。」

「・・・今日は送り狼になりたくないから、やめとく。」


そう言い残して、大野さんはマンションへと足早に去って行った。
俺はタクシーの中で、笑いを堪えるのに必死だった。

送り狼って・・・。
もう、本当にあの人は。
真面目なんだか、ふざけてるんだか。

掴みどころがなくて、何を考えてるのか分からないことも多いけど。
その突拍子もない発言が、とても好きだ。

大野さんと話をするまでは、暗く沈んでいた気持ちが、ほんの少しだけ明るくなった。
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