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その時、目の前の扉がガチャガチャと音を立てた。

扉の外から、あれっという大野さんの声がする。
今日に限って、いつもより戻ってくるのが早い。

俺は小声で潤くんに囁いた。


「・・潤くん。ヤバイって。」

「俺はいいよ。見られても。」


ヤケになっているのか、潤くんは俺から離れようとしない。

いやいや。
俺は嫌だって。

この恥ずかしい状況を他の人に見られるのは嫌だ。

俺は深呼吸して扉の外に声をかけた。


「・・大野さん・・すみません・・ちょっと、取りこんでて・・っ。」


あとは言葉にならなかった。
潤くんが俺の中に出入りする音と、衣擦れの音だけが聞こえる。


「・・すげえ締まってきた。見られてた方が感じるんじゃないのか?」


ひっそりと潤くんが耳元で囁いて、後ろからさらに俺を責め立てる。
その言葉に首を横に振り、必死で声を殺した。


「・・・ニノ、大丈夫?」


扉の外から大野さんの声が聞こえた。

何をされているのか気付いている。
そんな声だった。


「・・はい。・・・だから、今日は・・帰ってください・・。」

「・・・分かった。」


大野さんの遠ざかる足音が聞こえた。

俺、何やってんだろ。
潤くんも大野さんも俺を好きだって言ってくれたのに。
二人とも傷付けて、泣かせてしまった。

何とも言いようのない苦い気持ちで、胸がいっぱいになる。
泣かないでいようと決めていたのに、涙があふれてきた。

俺の様子を見た潤くんが、何を勘違いしたのか、急に動きを激しくした。
先ほどまでとは違って、乱暴に俺を扱う。


「・・なんでだよ・・かずっ・・。」


絞り出すような声。
嫉妬。戸惑い。恨み。
そういったものが潤くんから俺の中に流れ込んでくる。

強く掴まれている肩や腰が痛い。

でも、潤くんにこんな事させているのは、紛れもなく俺だから
終わった後、潤くんが酷い事したと後悔しなければいいのに

朦朧とした意識の中で、そう思った。
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