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「・・もう、決めたんだ。」


首を横に振りながら、ニノは言った。

こいつがさんざん考えて出した答えだろうから、もう覆る事はないんだろうな。
頭の片隅ではそう思ったけど、はいそうですかと納得できるものでもない。


「ニノ・・・。」


俺はそのままニノを抱きしめようとした。

だって、ニノを抱きしめて、キスをしたのは、つい最近のことだから。
今までのことが全部無かったことになるなんて、思いたくなかった。


「潤くん。駄目だよ。」


ニノに軽く制され、思わず睨んでしまった。

もう抱きしめることも出来ないのか。
自分の気持ちがどんどん沈んでいくのが分かる。


「俺は、納得してないからな。」

「納得してなくても、もう終わりなんだって。」


そう言って、ニノはソファから立ちあがった。

突き放したような声。
今まで聞いたことのない響きに、身動きが取れない。

ずっとずっと大好きだったのに
ニノがいれば、それだけでよかったのに
こんなに簡単に終わってしまうのか?

想いは声にならず、代わりに涙があふれてくる。

ニノは一瞬ハッとした表情をして、それでも何も言わずに玄関へと向かった。

そうか。
俺が泣いてても、立ち止まってくれないんだな。
ニノは本当に終わりにするつもりなんだな。

そう思うと、悲しくて、悲しくて、涙が止まらなかった。


「・・ごめんね。潤くん。」


玄関のドアが閉まる直前、そう聞こえた。
俺の聞き間違いだったのかもしれないし。
そう言ってほしいという希望かもしれない。


玄関脇の棚には、ニノに渡していた合鍵がポツンと置かれていた。
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