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家に着いたのは、22時半くらいだった。
潤くんに連絡すると、ホッとしている様子が手に取るように分かった。


「早かったな。」

「うん。1次会で帰って来たから。」

「そっか。どうだった?」

「・・どうもなにも疲れたよ。」


本当に疲れた。
大野さんに好きだって言われて、抱き締められて、キスされて
しかも、それを全部忘れろだって?

忘れられる訳ないっての。

あの時、自覚した気持ちは、もう誤魔化せるものではなくて
その気持ちのまま、潤くんと付き合っていくことは出来なくて

ああ、このまま消えてしまいたい。
これから先の事を考えるだけで、憂鬱になる。


「・・・明日は友達と約束があるから会えないんだけど、日曜日はどうする?」

「久々に実家に帰るって言っちゃったんだよね。」

「そうか。遅くなる?」

「う~ん。姉ちゃんの子供が俺と遊ぶって張り切ってたからなあ。」


嘘を付いた。
こんな混乱した気持ちのまま、潤くんに会う約束はできなかった。


「じゃあ、仕方ないな。」

「・・・ごめんね?」

「いいよいいよ。近いのに実家もなかなか帰ってないもんな。」

「・・・うん。」


潤くんは俺の嘘を素直に受け取ってくれた。

優しくて真っ直ぐな人。
ずっと俺に愛情を注いでくれた。

そんな人を俺はこれから傷付けるのかと思うと、涙が出てきた。
泣いている事がバレないように、話を続ける。

そろそろ電話を切ろうかという時、潤くんが言った。


「声がちょっと鼻声だけど、風邪ひいた?」

「・・うん。今日寒かったかも。」

「こじらせないように、気をつけろよ。」

「・・うん。ありがとう、潤くん。」


声が震えそうになるのを我慢して、電話を切った。

涙があとからあとから溢れてくる。
俺はソファに寝転がったまま、ずっと考えた。

潤くんのこと。
大野さんのこと。
自分のこと。

今までのこと。
これからのこと。

ようやく涙が止まったのは、辺りが薄明るくなり始めた頃だった。
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