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翌日、ガンガンと響く頭を抱えて、俺は起き上がった。
時計を見ると、もう昼近くになっている。


「・・頭、痛え。」


顔を顰めながら、ふらふらと冷蔵庫に向かう。
ペットボトルを取り出し、一気に水を飲み干すと、昨日の出来事が鮮明に思い出された。

ニノの唇の感触。
怒ったような表情。
そして、最後の冷たい声。

出来れば本当に忘れていたかったけど
何もかも、全部覚えていた。

本気で好きだって伝えたかっただけなのに
無理矢理キスして、怒らせてしまった。

しかも、忘れろなんて。

何で、俺あんな事しちゃったんだろう。
自分の勝手さに、ため息が出た。


「あ~・・ホント最低だな。」


その時、携帯電話の着信音が鳴り響いて、俺は頭を押さえた。
今はその音さえ辛い。
表示も見ないまま、通話ボタンを押す。


「・・・はい。」

「ふはは。すごい声。大野さん、大丈夫?」


電話の向こうから明るい翔くんの声が聞こえてきた。


「・・大丈夫じゃないよ。」

「二宮くんに送ってもらうよう頼んだけど、無事帰れたかなと思って。」


翔くんは、ただそれだけの確認のために、わざわざ電話をかけてくれたみたいだった。

普段だったら、二次会や三次会まで付き合うのに、悪い事したな。
昨日は何であんなに酔っぱらってたんだろうと、自分でも不思議に思う。


「・・あ~、ニノが送ってくれたんだ?」

「ははは。どっから記憶ない訳?」

「・・帰る時から。」

「そっか。すげえ酔ってたもんね。」

「うん。頭、ガンガンする。」


記憶のないフリは、思ったよりも簡単に出来た。
これで良かったんだ。
何も無かった事にすれば、また来週からニノと普通に働ける。

自分にそう言い聞かせたけど、どこかで不安を拭いきれなくて
早くニノに会いたい。

ただひたすら、そう思った。
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