O

ニノが俺の秘書になって、2カ月が過ぎた。

その頭の回転の速さと気配りの上手さは、今までのどの秘書よりも優秀だった。

何か聞こうと思うと、先回りしてすぐに教えてくれるし。
部屋に訪れた客を見て、必要な時だけ話に入ってきてくれるし。

それでいて、邪魔にならない。
ずっと同じ部屋にいても、気にならない。

それって、俺の中ではとても大事。
気になると、昼寝出来ないからね。


「ニノ・・。」


昼飯を食べて満腹になると、いつも眠気が襲ってくる。
俺は目を擦りながらニノを呼んだ。


「はいはい。14時になったら、起こしますね。」


ニノはいつも仕方ないなと苦笑して、俺にそっとブランケットをかけてくれる。

それはおそらく彼の私物で。
ニノの匂いに包まれながら、昼寝をするのが日課になっていた。


「今日は珍しく真っ直ぐ帰るんだ?」


その日は珍しく帰りの電車まで一緒で。
日頃あまり一緒に帰れないのを残念に思っていた俺は、つい皮肉を言ってしまった。


「ああ、そうですね。今日は、あの人都合が悪いみたいで。」

「そっか。」


あの人。
恋人の話をする時、ニノはそうやって言う。
それは、いつも針のように細く尖って、俺の心に突き刺さる。

理由は分かっていた。

頼れる秘書のハズだったのに、いつの間にか、どうしようもなく惹かれていて。
ニノが見せるいろいろな表情から、目が離せなくて。
そのどれもが、たまらなく可愛いと感じるようになってしまった。

でも、はっきり好きだと気付いた時には、もう遅くて。
恋人の話をするニノに、俺の気持ちなんて言える訳もなかった。
1/2ページ
スキ