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「ニノ。朝帰り?」


出勤した俺をちらっと見て、大野さんが言った。

げ。
なんで分かったんだろ。


「えっと・・どうしてですか?」

「ネクタイが派手だから。」

「・・これでも一番地味なやつだったんですけどね。」


俺は苦笑しながら言った。

紺地にカラフルなドット模様のネクタイ。
潤くんのクローゼットの中では地味だったんだけどなあ。

やっぱ、俺には無理だったか。
潤くんには似合うんだろうけど。

俺は潤くんのネクタイを外し、持っていた昨日のネクタイを付けた。

紺地に水色の細いストライプが入ったネクタイ。
うん。
普通だけど、こっちの方が落ち着くな。


「で、そうなんだ?」


大野さんが確認するように聞く。

そこを言わせてどうすんだと思いながら、俺は曖昧に返事をした。


「まあ、そんな感じです。」

「へえ。彼女いるんだ?」


大野さんは、何気に聞いてきたけど、その質問が一番答えにくい。
潤くんは恋人だけど、彼女ではないからね。
いないって言うのも嘘だしなあ。

俺は正直に言う事にした。


「・・付き合ってる人はいますよ。」

「ふ~ん。」


聞くだけ聞くと興味なさそうに、大野さんはパソコンのメールチェックを始めた。

あれ、なんか機嫌悪い。
朝だからテンション低いのかなあ。

コーヒーを入れてあげても、大野さんの機嫌はなかなか直らなかった。
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