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昨年末に急な人事異動が発表され、俺は内心ガッツポーズを決めた。

大野部長の部長付秘書。



俺は大学を卒業して、この下着メーカーに就職した。
本当は経理希望だったけど、何故か当時人の少なかった秘書課に配属された。

仕事を覚えようと必死で勉強して、一人で残業していたある日。
通りがかった彼から声をかけられた。


「まだ、帰んないの?」

「え?・・あ、ちょっと終わらなくて。」

「あんま無理すんなよ。」


何となく顔に見覚えがあったけど、ちゃんと名前を覚えていない時期だった。
とりあえず無難に返事をすると、彼はヒラヒラと手を振りながら笑顔で帰っていった。

仕立てのいいスーツ。
俺と変わらない位の身長。
何よりその柔らかい笑顔に見とれてしまった。


その人が、後になって、大野部長だということを知って驚いた。

30歳の若さで部長だったり。
社長やお偉いさんに囲まれて話してるのを見かけたり。
かと思うと、掃除のおばちゃんと談笑してたり。

とにかく俺が見かける度に、大野部長は違う側面を見せてくれていて。

きっとこの人と仕事をすると楽しいんだろうなと思っていた。
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