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「はい。見つめ合って。」
「肩を寄せて。」
「一緒に寝転がって。」
好き放題の注文を受け、何とかそれに対応していく。
久しぶりに智と見つめ合った。
久しぶりに智の体温を感じた。
その身体が細くなっているようで、少し心配になる。
「さと・・・リーダー、痩せた?」
「そう?最近、忙しいからかな。」
久しぶりに声をかけたのに
割と普通に返されて、逆に驚いた。
もしかしたら
智は既に俺との別れを消化したのかもしれないな。
もう・・・一か月も経つし
何だかんだ言ってモテる人だから、相手に不自由はしないだろうし
・・・何だかなあ。
自分から別れを切り出したくせに、俺はいつまでたっても消化できないでいる。
「はい。お疲れ様でした。」
「ありがとうございました~。最後、誰ですか?」
「櫻井さんと松本さんです。」
カメラマンさんに挨拶をして、楽屋に戻ろうとすると
「俺、先に行って知らせてくる。」
俺を置いて、智が駆け出してしまった。
二人で戻るのが気まずかったんだろうな。
そりゃ、分かるけど
あ~・・・・ヘコむなあ。
楽屋に戻ると、部屋の中には相葉さんだけだった。
「あれ。リーダーは?」
「煙草吸いにいった。」
「そう。」
また、いつもの避難場所か。
いい加減、俺が出て行ってもいいんだけど。
帰り支度をしていると
相葉さんがとんでもない事を言い出した。
「ニノ。俺、リーダーと付き合ってもいい?」
「は?」
「もう別れたんだよね?」
「・・・それ本気で言ってんの?」
俺をけしかけるための嘘じゃないかって思ったけど
相葉さんの目は真剣だった。
「・・・うん。本気だから、聞いてる。」
・・・嘘だろ?
相葉さんが智を好きだったなんて
俺、何回となくコイツの前で惚気けたのに
「・・・いつからだよ。」
自分でもぞっとするような冷たい声が出た。
「・・・さあ?いつからなんて、分かんないよ。」
好きにすればいいと思ったけど
相手が相葉さんじゃ、何のために別れたのか分からない。
同じ男だし、メンバーだし
俺との違いなんて、ほとんどないじゃねえか。
俺は智を普通に戻してあげたかっただけなのに