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あれから半月後。
俺はニノがいない淋しさに一ミリも慣れることなく、日々を過ごしていた。
撮影中や収録中は、普通に喋れるようになった。
そう。
以前と同じみたいに。
だけど
楽屋でニノから話しかけられることはなくて
そのくせ、他のメンバーとは談笑してて
そんな光景が辛くて、俺は喫煙スペースに逃げ出してばかりいた。
「最近、煙草吸いすぎじゃねえの?」
喫煙スペースに来た松潤が、煙草に火を点けながら言う。
この人が仕事場で煙草を吸うのは、珍しい。
ってことは、俺と話すために来たのか。
「・・・・そう?」
「うん。ほとんど楽屋にいないで、・・・何から逃げてんの?」
「・・・・。」
何から・・・・って。
それを考えるだけで、心が痛い。
俺はニノが好きで
でも、ニノは俺が好きじゃなくて
ただのメンバーに戻ったんだから、普通にしなきゃって思うのに
全く普通じゃいられない。
「何があったか知らないけど、気持ちを誤魔化す必要はないんじゃねえの?」
胸の内を読まれたような言葉にギクリとする。
ニノとはたまに飲みに行くみたいだし、松潤は何か聞いてるんだろうか。
「・・・ニノに何か聞いた?」
「いや。あいつ、最近付き合い悪いし。」
「そう。」
「何。あいつと別れたの?」
「・・・・・・うん。」
別れた事を認めるだけで、また泣きそうになる。
最近、俺の涙腺どうかしてんな。
「わ・・・ちょっ・・泣くなよ?」
「・・・泣いてない。」
「もう・・・しっかりしろよ。」
「うん。ごめん。」
文句を言いながらも、松潤は俺の肩を抱いて
くしゃくしゃと乱暴に頭を撫でてくれた。
ニノと俺の間に出来た数センチの隙間は、埋まることなく
いつも冷たい隙間風が吹いているようだった。