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ギュウギュウと力任せに抱きしめていると
「痛いよ。」
と腕を叩かれ、文句を言われた。
「あ、ごめん。」
力を緩めると、ニノとの間に少し隙間が出来た。
この一ヶ月、ホント辛かった。
隣に座っているニノと、どこも触れ合っていないという状況は、今までになくて
不安で淋しくて・・・たまらなかった。
でも、ニノを忘れることなんて、できなかった。
「今日は、持ち帰るからな。」
耳元に唇を寄せて、囁くと
「あ、俺、予定あるんだった。」
突然、普通のテンションで喋りだす。
ちょっと、待て。
そりゃ、ないだろ。
「は?」
「そんな怖い顔すんなよ。」
俺の表情を見たニノは、とても嬉しそうだ。
どうしたものかと思っていると
「嘘。キャンセルしますよ。」
なんて、早速携帯電話を取り出している。
誰と・・・かな。
噂になっていた女の子の一人だろうか。
俺の視線を感じたのか。
ニノが携帯電話から顔を上げずに、ぼそりと言う。
「心配しなくても、全て手を切るから。」
「いや・・・。」
「言葉だけじゃ、不安?証拠でも、見せようか?」
「・・・信じるから、いい。」
そう言うと、ニノの耳がパッと赤くなった。
ははっ。
顔より耳の方が、ずっと素直じゃねえか。
思わず耳に手を伸ばすと、ニノの身体がピクリと震えた。