O



「智。」


しんと静まり返った楽屋に、ニノの声が響く。


ああ。

こんな甘い声で名前を呼ばれたのは、久しぶりだ。

返事をしたいけど、さっきから涙が止まらなくて声が出ない。


ニノの想い。

相葉ちゃんの想い。

傷付いたのは自分だけだと思いこんでいたから、何も気付けなかった。


「開けるよ。俺、当てるからね?」


その声に、以前の収録でもやったかくれんぼを思い出す。

あの時は、二人でギリギリ当てないようにと、こっそり遊んでいた。

だって
俺もニノも、お互いがいる場所が分かるから。


「ほら、ね?」


イタズラが成功した子供のような顔をして
ニノが俺に手を差し出してくる。


小さな子供のような手。


その手に掴まりロッカーから出て、視線を合わせた。


「好きな人を見つけると、その人と結ばれるってサンタさんに聞いたんだけど。」


照れたように話すニノが、可愛くて
いつの間にか涙は止まっていた。


「・・・俺も聞いた。」

「あ、ホント?奇遇だね。」

「トナカイには乗ってなかった。」

「きっと路駐してきたんだよ。」


ふふふ、と二人同時に笑い出す。


くだらないことで一緒に笑ってくれるニノが好きだ。

くだらない遊びに付き合ってくれるニノが好きだ。


掴んだ手を離すタイミングが分からなくて、ニノを見ると
大好きな薄茶色の目が、優しく俺を見つめていた。


・・・・ああ。

駄目だ。


「・・・ニノ・・・。」


掴んだ手を引き寄せるようにして、俺はニノを抱きしめた。



  
1/3ページ
スキ