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「智。」
しんと静まり返った楽屋に、ニノの声が響く。
ああ。
こんな甘い声で名前を呼ばれたのは、久しぶりだ。
返事をしたいけど、さっきから涙が止まらなくて声が出ない。
ニノの想い。
相葉ちゃんの想い。
傷付いたのは自分だけだと思いこんでいたから、何も気付けなかった。
「開けるよ。俺、当てるからね?」
その声に、以前の収録でもやったかくれんぼを思い出す。
あの時は、二人でギリギリ当てないようにと、こっそり遊んでいた。
だって
俺もニノも、お互いがいる場所が分かるから。
「ほら、ね?」
イタズラが成功した子供のような顔をして
ニノが俺に手を差し出してくる。
小さな子供のような手。
その手に掴まりロッカーから出て、視線を合わせた。
「好きな人を見つけると、その人と結ばれるってサンタさんに聞いたんだけど。」
照れたように話すニノが、可愛くて
いつの間にか涙は止まっていた。
「・・・俺も聞いた。」
「あ、ホント?奇遇だね。」
「トナカイには乗ってなかった。」
「きっと路駐してきたんだよ。」
ふふふ、と二人同時に笑い出す。
くだらないことで一緒に笑ってくれるニノが好きだ。
くだらない遊びに付き合ってくれるニノが好きだ。
掴んだ手を離すタイミングが分からなくて、ニノを見ると
大好きな薄茶色の目が、優しく俺を見つめていた。
・・・・ああ。
駄目だ。
「・・・ニノ・・・。」
掴んだ手を引き寄せるようにして、俺はニノを抱きしめた。