O
首筋に唇を滑らせている時も
真っ白な脇腹に舌を這わせている時も
唇を塞いでいる時以外、ニノはずっと俺の名前を呼んでいた。
「大野さん・・・おお・・の・・さん。」
喘ぎ声に混じって聞こえるその声が、甘くて
切なくて・・・・
少なくとも
今この瞬間は、ニノも俺を求めているんだなと自分勝手に受け取った。
備え付けのボディローションを代用して中を解していると
いよいよニノに余裕がなくなってきた。
「・・・っ・・・や・・・んんっ・・。」
顔を真っ赤にしてイクのを我慢しながら、俺にしがみついてくる。
薄く開いた唇に誘われて、何度もキスをしていると
欲情して濡れた目に心臓を射抜かれる。
「・・・・エロすぎだって・・。」
「・・・・・え・・・?」
「身体キツかったら、ごめん。」
もうどうにも我慢できなくなり
ベッドに座ったままの体勢で自分のモノにゴムを被せ、ニノの身体をゆっくりと下ろす。
「あ・・・あ・・あああっ・・・!!」
さすがにキツイんだろう。
ニノの声が一際高くなり、身体を大きく反らせた。
「大丈夫・・・か?」
中の締め付けに今すぐ動きたくなる欲望を何とか抑え込んで、耳元で囁く。
「・・へ・・・いき・・・。」
「よかった。動いていい?」
「ん・・・いいよ・・・。」
細い腰を掴んで、上下に揺さぶっていると
甘く啼いているニノの目から、ふいに涙が零れ落ちた。
生理的なものなのか、感情的なものなのか分からないけど
どのみち泣かせている原因は俺なわけで
目尻に唇を寄せて、その涙を吸い取ってやる。
「ごめんな。今夜だけだから。」
今夜だけ・・・。
自分に言い聞かせるように、もう一度呟いた。
繋がったままニノを後ろに倒し、その上に乗っかる。
泣きつづけているニノの顔は、ひどく幼く見えて
まるで大学生の時の彼を抱いているように思えた。
あの当時、認められなかった想い。
もしちゃんと自覚して行動していれば、今とは違う現実があっただろう。
ニノと付き合っていたかもしれないし
別れていたかもしれない。
だけど
俺は・・・・認められなかった。
過去を後悔しても、もう遅い。
「お・・おの・・・さん・・・。」
「ん?」
「・・おおの・・・さん・・・好き・・。」
半分意識を飛ばしたニノが、うわ言のように呟く。
うわ言でも何でも
その言葉が聞けただけで
もう十分だなって思う。
「うん。俺もだよ。」
縋りついてくるニノを抱きしめて、隙間ひとつないように奥の奥まで貫く。
「・・あっ・・・ああああ・・・・。」
このまま時間が止まればいいのに
このまま朝が来なければいいのに
行為をやめると、時間が過ぎるのが早くなってしまいそうで。
明け方まで、ずっと繋がったままでいた。