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夜の高速を無言のまま進んでいく。

運転しているのは、大学のサークルで一緒だったニノ。

先月、10年ぶりの同窓会で再会した。



「お久しぶりですね。大野さん。」


そう言って笑う姿は、大学の時とさほど変わらない。

ちっちゃくて、可愛いニノのままだ。


「お前、変わらねえなあ。」

「そうですか?年相応ですけどね。」

「や、まだ大学生みたいだって。」

「んふふ。あなたは・・・おじさんになりましたね。」

「うるせ。」


テンポのいい受け答えに当時の記憶が蘇る。


年下のくせに生意気で
何かと纏わり付いてきて
口では文句ばかり言ってたけど

俺は、かなりコイツを可愛がっていた。


キラキラと水分を含んだ茶色の瞳に見つめられると、ドキリと胸が高鳴った。

ふざけて背中に寄り掛かられると、見られていない頬が熱くなった。


今思うと
それは、確実に恋だったけど

当時の俺に認めることは出来なかった。


「このままでいいの?」


気持ちを見透かされたような問いにハッとして、運転席を見る。

横顔のニノは何を考えているのか分からない。


「何?」

「何って・・・。ドライブに連れてけって言ってた割に、目的地はないみたいだし。」

「・・・。」

「難しい顔して、ずっと黙ってるし。」

「ごめん。」

「謝ってほしい訳じゃなくて。」


ニノはもどかしそうに、右手で髪をクシャクシャと弄った。


ああ。

この癖も懐かしいな。


同窓会で再会したのが、1か月前。

連絡先は変わってないんだと、誰かに話していたのを聞いた。

だから
昨日、思い切ってドライブに誘ってみたんだ。

って言っても
俺は免許も車も持ってないから、ニノの車でってことになったんだけど。


「・・・・結婚したんだって?」


俺はずっと聞きたかったことを聞いてみる。


「・・・・そうですね。」


その返事に鉛のように心が落ち込む。


そうか。

そうだよな。

もう俺たちは家庭を持っていても、おかしくない年齢だ。


「・・・・いつ?」

「5年位前ですかね。」

「・・・・へえ。」

「連絡しないですみません。式もあげなかったので。」

「・・・・いや。・・・おめでとう。」


自分の声は震えていなかっただろうか。

ちゃんとお祝いを伝えられただろうか。


二人っきりの車内で、ニノとの距離は近いのに
触れることすら出来ない。


自覚しないまま過ぎ去った想いが、ひどく切なくて
まだ想いを引きずっているらしい自分が、ひどく哀れで

泣きたくなった。




 
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