A


掃除をしようとリビングに入ると、ソファで寝ているニノを見つけた。


ああ、良かった。

無事なんだ。


スヤスヤと眠る顔は、昔とちっとも変わっていない。

可愛いニノのままだ。


ソファに屈み込んで、寝顔を眺めていると


「・・・ん・・・。」


気配を察したのか、ニノがうっすらと目を開けた。


「おはよ。ニノ。」

「あ~・・・相葉さんか。」


ニノは気だるそうに身体を起こし、煙草を咥えた。

カチカチという音だけで火の点かないライターを持て余して、俺に差し出す。


「点けて。」


まだ覚醒中のボンヤリした様子といい
上目遣いの潤んだ目といい

誘ってるようにしか見えないって、自覚あんのかな?


「ほら、貸して?」

「ん・・。」


ニノの口から煙草を取り上げ、自分の口に咥える。

何度かライターを鳴らすと、やっと火が点いた。

ふうっと煙を吸い込み、煙草をニノの口に戻す。


「サンキュ。」

「ふふ。間接キスしちゃった。」

「・・・馬鹿。」


おどけて言うと、ニノが呆れたように笑う。


ずっと好きだった。

何度告白しても、駄目だと言われた。

それでも、諦めきれない。


「・・・間接じゃないキスさせてよ。」

「駄目。」

「ちえっ。ケチ。」


口を尖らせると、ニノが笑いながら顔を顰める。

さっきから庇うようにしている右腕
包帯が巻かれているのが、シャツの上からでも分かる。

怪我でもしたんだろうけど、俺からは何も聞かない。


・・・俺が心配すると、ニノが困るから。


「お握り食べる?」

「・・・うん。」


何にも気付かないフリをして、俺は台所へ向かった。

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