番外編3
「朝、声をかけた時にはもう・・・。」
二人の後ろ姿を見送って1ヶ月後のこと
何もかも済ませた後で、そいつはやってきた。
「親父さんが、先生に迷惑かけるなって言ってたから、連絡もしなかった。・・・悪いね。」
金髪にスーツ姿。
以前見かけた時とは印象がずいぶん違う。
「・・・跡を継ぐことにしたのか。」
「・・・頼まれちゃったからね。」
「じゃ、仕方ねえなあ。」
軽い口調で揶揄うように言うと
「慣れなくて大変だよ。」
と、ふわっと無防備に笑う。
堅気だった彼が跡を継ぐには
たくさんの葛藤と諦めと
大変な覚悟が必要だっただろう。
自分より年下の彼に少し同情した。
「二代目、そろそろ。」
扉の外から遠慮がちな声が聞こえて
彼がハッと表情を固くした。
「今日は報告に来ただけだから。」
「おう。」
「親父の希望を聞いてくれて、ありがとうございました。」
そう言って、彼はピシッと綺麗な礼をした。
他の医者にはかかりたくない。
痛み止めが効かなくなってもいい。
先生、迷惑かけてすまないんだけどさ。
親父さんの言葉が表情が蘇る。
「・・・客としての礼儀をわきまえるなら、治療はしてやるよ。」
「ははっ。そん時は頼むよ、先生。」
二代目の顔に戻った彼は
口の端を少しだけ上げて笑った。
そんな時が来ることがなければいい。
そう願ったけど
そんなに甘い世界じゃないことも知っていた。
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