番外編-2
後日
「ニノ。いいものあげようか?」
すっかり回復した相葉さんが、満面の笑みを浮かべて部屋にやってきた。
「何?変なもの食わせんなよ?」
「ちがうよ。試食じゃなくて。」
基本的に相葉さんの作る飯は美味いんだけど
たまにアイデアが浮かんだと言っては、世にも珍しいモノを作るから
試食させられる身としては、たまったもんじゃない。
「これ。」
相葉さんが出したのは、一枚の写真で
「・・・・え。」
「カッコいいよね。昔、でっかい病院に勤めてた時のだって。」
今より少し若い先生が、医者っぽい雰囲気を漂わせて笑っていた。
いや、今もちゃんとした医者なんだけど
何て言うか
変な凄みが加わってるからなあ。
「お守りに持ってていいって。」
「は?」
「ちゃんと大ちゃん先生に許可もらってるから。」
「ええ?」
俺の手に写真を押し付けて、相葉さんは部屋を出て行った。
いや
ちょっと
こんなの貰っても、困るんだけど
「・・・まいったなあ。」
自分の頬が緩んでいるのが分かる。
これでも、さ。
二代目ってことで、組の奴らには慕われてたり、恐れられてたりするわけで
そんな俺が先生の写真見て、にやけてるなんて
・・・ホント、困る。
「二代目。そろそろ出発の時間ですが。」
軽いノックの後に、潤の声が聞こえた。
相変わらずタイミングの悪いヤツ
「後、5分で行く。車で待ってろ。」
「はい。」
気を引き締めるために、意識して低い声を出すと
背筋が伸びたような声で潤が返事をした。
急いで階段を降りていく足音に笑えてくる。
「ははっ。とばっちりだな。」
独り言を呟きながらネクタイを締め直して
机の上に置いたままの先生の写真を二つ折りにして
そっと財布の中に仕舞った。
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