番外編-2
相葉ちゃんに解熱剤を飲ませて、もう1時間ばかり寝かせることにした。
「大ちゃん先生。ありがとう。」
「仕事だからな。」
「・・・仕事ついでに何か話してて。俺、人の声がしてないと落ち着かない・・・。」
仕方なく潤を呼んで、診察室に座らせた。
困ったな。
コイツと何を話せばいいんだろう。
「先生。ホントは何科が専門なんすか?」
沈黙している俺を見かねた潤が、助け船を出すように質問してくれた。
「え?・・・ああ、何だろう。外科かな?」
「何で疑問形なんすか。そこ。」
「何つうか、救急にいたから。専門外でも診ることあったし。」
「へえ。」
そう。
結構大きな病院の救急センターで、俺は働いていた。
何も分からないまま無我夢中で働いていたら
突然、何か大きなものに巻き込まれた。
権力とか派閥とか、そういう得体の知れないモノ。
呑みこまれる前に辞めてしまったけど
「辞めてからは?」
「んー。いろんなとこ流れて、もういいやって思ったから。自分でやろうかなって。」
「先生らしいすね。」
「そか?」
あのまま呑みこまれていたら
きっと、俺は医者ではない何かになっていた。
和と出会うことも
和を助けることも出来なかっただろう。
「・・・寝たかな。」
「ああ。」
「すみません。相葉のためにベッド、ありがとうございます。」
潤がぺこりと頭を下げる。
律儀なヤツ。
「コーヒーでも飲むか。」
「はい。」
ぐんと伸びをして、キッチンへ潤を誘う。
煙草を咥えながらコーヒーを淹れていると、潤の携帯が鳴って
着信表示を見たその慌てた様子で、相手が誰だか分かってしまった。
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