番外編-2



「次の方、どうぞ。」


声をかけると、見慣れた顔がおずおずと診察室に入ってきた。


相葉ちゃん。

和の料理人。


「今日は仮病じゃなさそうだな。」

「・・・もう、そのネタやめようよ。」


以前、和を心配するあまり仮病を使って診察に来たことをほのめかすと
相葉ちゃんが眉をしかめて苦笑する。


あー

結構、辛そうだな。


きっと元々身体が丈夫な方じゃないんだろう。

風邪をひくと長引くからと言って、普段から健康に気を使っていたのに


「どこが一番痛い?」


聴診器を胸に当て、口の中を開けさせる。

特に炎症を起こしている感じはないが、押さえた首筋は熱い。


「頭。」

「熱も高いな。」

「・・・うん。」


この時期だから大丈夫だろうけど、念のためインフルエンザの検査もして
結果を待っていると、相葉ちゃんが感心したように言った。


「大ちゃん先生。ちゃんとしたお医者さんだったんだね。」

「・・・注射も打っとくか?」

「いや、うそ。ごめんなさい。」

「はは。辛いのに無理して喋るなよ。」


そう言ってやると、相葉ちゃんはホッとしたように頷いて目を閉じた。

最後の客だし、結果が出るまで寝かせてやるか。

ベッドに相葉ちゃんを寝かせて診察室を出ると、また見慣れた顔がいた。


「お前、何してんの?」

「あ、先生。お世話になります。アイツ、相葉を送ってきたんです。」


潤。

和の付き人・・・のくせに、何やってんだか。


「和は?」

「二代目は出張で福岡に。」

「ふうん。」


どうりで最近、音沙汰ない訳だ。

くそ。

アイツ、俺に心配させるからっていう変な理由で、仕事関係の事は一切喋らないからなあ。


あれ、知らなかったんですか?
と言わんばかりに、潤が首を傾げていたけど

答えてやるのは癪だったから、検査結果を確認して診察室に戻った。


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