番外編-2


身体のあちこちに桜の花びらを纏ったまま、先生の家に戻った。


「花びら、いっぱい付いてる。」


柔らかい表情をした先生が、俺の服から花びらを取ってくれる。


「困るよ。先生。」


なんか、こんなに優しくされると
どうしていいのか分からなくなって、困る。


「ん?」


先生が不思議そうに首を傾げる。

そりゃ、そうだ。

先生には、さっぱり意味が分からないだろう。


だって、俺は男で
カタギでもなくて

先生に想ってもらう資格なんか、これっぽっちもなくて


俺の奥底に潜むネガティブな考え
重くのしかかる二代目という職業


でも、逃げたいとは思わない。


「何が困るって?」

「・・・言いたくない。」


言える訳がない。

やさしくされて、困るなんて


「お前ね。」


先生が諦めたように、溜息を吐く。


「ん?」

「どんな理由があろうと俺の前から消えたら、ぶっ飛ばすよ?」

「・・・・・んはははっ。」


腹を抱えて、笑った。


そうだ。

こういう人だった。


俺よりよっぽど肝が据わっている。

きっとこの人の中では、とっくに覚悟が出来ているんだろう。

二代目である俺と一緒にいる覚悟が・・・。

覚悟が出来ていないのは、俺の方か。


「何だよ、笑うな。」

「いや、もう、いろいろ負けたよ。」


分かっているのかいないのか。

先生はそれ以上何も言わずに、煙草を咥えた。


フワリと吐き出される煙は、いつもの匂いで
二人で同じ煙草を吸いながら

朝までの時間を過ごした。

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