番外編-2
ここ最近、バタバタしていて
地方に出かけるなんてことも多くて
やっと会いに来れたのに
なんで、こんな時間に外に出なきゃいけないんだ。
桜の木の下に来るまで、そう思っていた。
シンとした住宅街
真夜中の気配
「ほら。すげえだろ?」
子供のように得意げな先生の視線の先には、それはそれは見事な桜並木が広がっていた。
満開の桜が闇夜にぼんやりと浮かび上がっていて
なんて言うか、幻想的だ。
きっと昼間だと、印象が違うだろう。
「・・・すごい。」
呆然としている俺を見て、先生が嬉しそうに笑う。
ふふ。
変わった人だな、ホント。
何が楽しくて、俺なんかに執着するんだか。
「ちょっと歩こうか。」
「うん。」
ゆっくりと桜並木を歩いていく。
不思議な感じだ。
こんな真夜中に
こんな住宅街を先生と二人で歩いているなんて
手は繋いでいないけど
肩が触れ合うほど、距離は近い。
「和。花びら、くっついてる。」
俺の顔を覗きこむ先生の目が優しくて
俺の頬に触れる先生の手が暖かくて
このまま
キスされてもいいかな、なんて
ちょっとだけ思って、目を閉じた。