番外編-2
桜の花びらが舞い落ちるのを見て、どうしてもアイツと花見に行きたくなった。
「やだよ。めんどくさい。」
って、言いそうだけどな。
でも、いつも突然ふらりと現れて、数時間を過ごすだけだし
アイツがどんな職業か知ってるから、特に文句もないんだけど
たまには、いいよな。
なんて思ってた日の夜にアイツが現れたから、花見に行こうって誘ってみたら
「え?花見?今から?」
案の定、思いっきり眉をひそめられた。
まあ、無理もない。
時刻は、午前3時。
こんな時間に行くもんじゃない。
「そう。花見。」
「やだよ。こんな時間に。」
口を尖らせる様は可愛くて、思わず頬が緩みそうになる。
イケナイ。イケナイ。
「こんな時間じゃないと、行けないだろ。」
「・・・。」
二代目である自分の職業を言われたと思ったのか、和は口を閉ざしてしまった。
馬鹿だな。
まだ気にしてんのか。
「ここの診療時間もあるしな。」
ポンポンと頭を撫でてやると
「・・・うん。」
少しホッとしたように、頷いた。
「こうしてれば分かんないよ。」
黒いキャップの上からパーカーのフードをかぶらせると
どっからどう見ても、20歳そこそこの学生にしか見えない。
「気が進まない。」
「くくっ。往生際が悪いんだから。」
「そんなこと言ったって。」
「ほら。自転車の後ろに乗ってりゃいいから。」
自転車の鍵を見せて、手を差し出すと
やっと諦めたように立ち上がった。