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お互いの思惑が一致した先生と抱えるようにして、和を診療所に運び込んだ。
「じゃ、一週間後に迎えに来ます。」
先生に頭を下げると、和が何か言いたげに俺を見る。
「・・・何だよ?」
「いや、別に。」
「じゃ。」
「うん。みんなに心配しないように言っといてよ。」
「ああ。」
その時
----Prrrrr----
診療所の電話が鳴って、先生が奥へ消えた。
それを待っていたかのように、和が口を開く。
「翔さん。診断書送りつけて、終わりにしとけよ?」
「・・・。」
ははっ。
流石にバレてたか。
俺は和をこんな目に遭わせた相手の組を許せない。
首謀者の若頭を破門にした位で許せる訳がなかった。
「金が取れても取れなくても、動かないこと。」
慰謝料を貰って金で解決するか。
相手が困る位のデカイ仕事を奪い取るか。
どっちにしようか迷っていたのに
俺の心を読んだように和が溜息を付く。
「これは、お願いじゃなくて命令だから。」
和じゃなく、二代目としての声で言われると
俺には頷く以外の選択肢はない。
「・・・分かりました。」
「心配しなくても、この借りは返してもらうよ。いつか、ここだってタイミングでね。」
クスリと笑って言い放つ和の奥底にある冷酷な光にゾクリとする。
と、同時に
どうしようもなく惹きつけられた。
・・・そうだよ。
今回だって、きっとコイツは監禁される前に何とか出来たハズだ。
相手はプロって訳じゃなかったし
でも
それをしなかったのは、このどうでもいい諍いに早く決着をつけたかったんだろう。
その思いは、俺も同じだけどさ。
そのために自分の身体を使うのは、勘弁してほしい。
心配しすぎて、こっちの身体が持たないっての。