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だけど、若頭は『和』という呼び名に反応したようだった。


「・・・先生。あんた、二代目とどういう関係?」


感情を押し殺した低い声
きっと彼は綺麗な眉をキュッと潜め、険悪な顔をしてるだろう。


まったく・・・どいつもこいつも和に惚れてるなんて
一体、この組はどうなってるんだ。

アイツも分かってるみたいだから、変な事はさせないだろうけどさ。


「なあ?」


刺々しい若頭の声に覚悟を決めた。


「・・・大切に思ってるよ。」


至極、大真面目に答えた。

アイツにも、ちゃんと伝えた事はない。

いつも茶化してばかりだったからな。


「え?・・あ・・・ええっ?」


電話の向こうで急に慌て出した彼を無視して呼びかける。


「だから、櫻井さん。・・・和の事、頼むよ。」

「先生・・・・。」


しばらくの沈黙の後、若頭は静かに言った。


「・・・和が攫われたかもしれない。」

「連絡は?」

「和からも向こうさんからも、ない。」

「携帯は?」

「留守電になる。」

「・・・そっか。」


若頭と話しながら、頭の中は冴え渡っていた。


さらわれた・・・・・・だって?

小さいとはいえ組のトップを攫うなんて、相手の組も何考えてんだか。


でも、そうか
携帯の電源は、入ってるのか。


「・・・櫻井さん。和がいなくなって、どれくらい?」

「運転手の潤と連絡が取れなくなって、2時間。」


2時間か・・・・・・

取引するにしろ、痛めつけるにしろ

まだ、間に合うハズだ。


「もう電話切るから。」

「え、ちょ・・・・待てって。」

「何か分かったら連絡する。」


電話の向こうで、若頭がまだ何か喚いていたけど
気にせず、通話を終了した。


さあ
こっからは、時間との戦いだ。

俺の持っている人脈全てを使って

必ず、和を見つけ出してやる。


だから・・・・・・和

無事でいてくれ。
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