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「・・・・先生、いる?」


灯りの消えている部屋の扉を、俺は数回ノックした。

今が明け方の5時だとしても
どうにかして、この扉を開けてもらう必要があった。


「二代目。俺が・・・。」

「よせ。」


俺の身の回りの世話をしている潤が、前に立って扉を蹴破ろうとするのを遮る。

ここの先生は、気難しい。

普通の医者には見せれないような怪我も、頭を下げれば何も言わずに治療してくれるけど
力で押し通そうとすると、途端に臍を曲げてしまう。


たっぷり10分は待たされたと思う。


カチリと鍵の外れる音がして
欠伸をしながら先生が出てきた時には、本当にホッとして
俺はその場に座り込んでしまった。


「・・・・随分、やられてんじゃねえか。」

「あんたが、早く開けてくれないから・・・二代目がっ!!」

「こんな時間に怪我するヤツが悪い。」

「何っ!?」


俺の身体を心配するあまり、潤の口調が荒くなっていく。

あ~・・・・ったく。

堅気の先生に、そんな口利くなっての。

かといって、先生は動じる訳でもなく
真っ向から潤を見据えている。


「お前、もう帰ってろ。」

「・・・や、そんな・・・帰れません。」


今にも泣きそうな顔して、潤が立ち尽くす。

俺は刺された右腕を庇うように、ユラリと立ち
すうっと息を吸い込んだ。


「帰れってのが、分かんねえのか!!」

「・・失礼します!」


俺の恫喝にビクリと身体を震わせ、潤が一礼して踵を返した。

一連のやり取りを面白そうに見ていた先生が、くくっと喉を鳴らして笑う。


「二代目も大変だな。」

「先生・・・ホント頼むよ。血、止めて?」

「中入って、シャツ脱いで。」


どうやら治療してくれる気になったらしい。

俺は自宅兼診療所になっている先生の家へと足を踏み入れた。

 
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