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それから毎週金曜日の放課後、松本くんが作業部屋に訪れるようになった。

金曜日は
かずが居酒屋のバイトに早い時間から入っている日で

それがどんな意味を持っているのかなんて
俺に分かるわけもなく
難しいことは、あまり考えないようにしていた。


「ねえ、大ちゃん。最近、潤くんが来るようになったでしょ?」


俺の膝を枕にしてゲームをしていたかずが、ふいに言った。

今日は何となく時間が空いたから、一人暮らしをしている部屋にかずを呼び出していた。

近所に住んでいたかずは実家から通ってるけど
俺は1時間もかけて大学に通う気にはなれなかったし
物件を探している時に、この部屋を見て一目で気に入ってしまった。

見かけは古い木造アパートだけど
フローリングのくたびれた感じとか
何も間仕切りのない、ただのガランとした広い空間が居心地良かった。


「うん。部屋の隅っこで、俺が絵描くの見てるよ。」

「はははっ。可愛い事してんなあ。」


松本くんの様子を思い浮かべたのか、かずが吹き出した。

確かに可愛いんだよね。
いつもちょっと緊張した感じだから。


「それで?飯でも誘ってやった?」

「ううん。松本くん、1時間位で帰るし。」

「そうなんだ?・・・ふうん。」


俺がそう言うと、かずはちょっと考え込むように視線を泳がせた。

松本くんがどういうつもりか知らないけど
あまり長時間いられると、本当に作業がはかどらないから
1時間という時間は、気晴らしになるちょうどいい時間だった。


「どうかした?」

「・・・何でもない。ねえ、それより、しようよ?」


その話題を打ち切るように、かずが言った。

俺に付き合ってる人がいない時は、昔からかずが相手をしてくれる。
こんな関係になったきっかけは、何だったんだろう。

そうだ。
俺が一人暮らしするって家を出る時だったな。

その時の事を思い出そうとしていると、かずが俺を押し倒してキスをしてきた。


「・・・唐突だなあ。」

「何だよ。駄目?」


そう言って、俺を見下ろす目は欲情が溢れるようにキラキラしてて
こんな目で見られたら、誰も断れないよって思う。

俺は簡単にスイッチが入ってしまって
もうかずをどうやって喘がせようかという事しか、考えられなくなっている。


「駄目なんて言ってないだろ?」

「ふふふ。良かった。」


俺は色気たっぷりに笑うかずを引き寄せて、深くキスをした。
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