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大ちゃんと付き合い始めてから1ヶ月後、潤くんが一人で店にやって来た。


「・・・潤くん。」

「よっ。久しぶり。」


授業で顔を合わせる事はあっても、話しかけられずにいたから
相変わらず男前な笑顔が俺に向けられて、ビックリする。

詳しい経緯は聞いてないけど
二人が別れたのは、多分俺のせいで

憎まれても仕方ないのに、どうして潤くんは笑ってくれるんだろう。

とりあえず席に案内して、俺は頭を下げた。


「・・・ごめん。」

「謝んなよ。俺が振ったんだから。」

「だけど。」

「・・傷は浅かったと思ってるよ。」


俺は潤くんが本気で大ちゃんを好きだったのを知ってる。

だから、傷が浅い訳なんてないのに

ああ、泣きそう。
どうすればいいんだろう。

でも、何を言っても無駄な気がするから
・・・俺には謝る事しか出来ない。

また謝りかけた俺を制して、潤くんがニヤッと笑った。


「それに、今日はニノに会いに来たんじゃないから。」

「え、違うの?」


今までの重い雰囲気を壊すように、潤くんは軽い口調で言った。

何だ。

俺に言いたい事があるから、一人で来たと思ったんだけど。

じゃ、何しに来たんだろう?

首を傾げていると、通りがかった相葉さんが声をかけてきた。


「あ、潤くん。」

「早く着いたから、店に入っちゃったけど、良かった?」

「いいけど。飯食いに行くんだから、ここで食べないでよ?」

「うん。じゃ、ビールとナッツ。」

「はいは~い。ちょっと待っててね。」


俺にサボるなよと言い残して、相葉さんは席を離れた。

・・・え?

潤くんと相葉さんって、友達だったっけ?

さっきの二人の親しげなやり取りは、何だ?


「え、何?相葉さんと約束してんの?」

「そう。」

「どういう関係?」

「飯食いに行くだけだよ。」

「ふ~ん。」


潤くんはポーカーフェイスを気取って、何でもないように答えていたけど

その顔をじっと見つめていると、観念したように口を開いた。


「・・・最初は、足の怪我が気になって、誘っただけなんだけど。」

「うん。今は?」

「・・・何だか居心地良くて、ちょっといいなって思ってる。」

「そっか。そうなんだ。」


恥ずかしそうに話す様子が微笑ましくて、頬が緩みそうになってくる。

大ちゃんと付き合っていた潤くんと
俺を好きだと言ってくれてた相葉さんが、どうにかなるなんて

すごく不思議な感じだ。

・・・うん。

でも

俺と大ちゃんのせいで、二人とも傷付けてしまったから

そんな二人が幸せになれるなら

俺にとっては、とても嬉しい事だ。


「お前、言うなよ?」


照れたように俺に口止めする潤くんは、明らかに恋している人の顔で

とてもとても可愛かった。
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