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駅の近くにあるバイト先に入ると、休憩室からいつもの明るい声が聞こえた。


「あ~、ニノ!おはよう!」

「・・おはようございます。相葉さん。」


相葉さんに応じる俺のテンションは低い。

何となく気まずい雰囲気のまま、潤くんと駅で別れてきたから
今は、この賑やかな人の相手をする気分じゃない。

相葉さんは、もう制服に着替えていて
ソファでゴロゴロしていた。


「いつもより猫背だね。何かあった?」


その前を通り過ぎようとした瞬間、相葉さんが言った。

この人は、普段はひたすら明るくて騒がしいだけなのに
俺がいつもと違うと心配して、妙に年上ぶって声をかけてきたりする。

・・・ああ、もう
相手するつもりなかったのに。


「あんた、俺の猫背の違いが分かんの?」

「そりゃ、分かるよ~!違いが分かる男だもん。」

「・・・声、うるさいって。」

「うるさいって言うな。先輩だぞ?」

「あれ、そうだっけ?」


とぼけた俺に、相葉さんがぎゃーぎゃーと文句を言ってくる。

相葉さんは1つ年上で、同じ大学に通っている。
合格が決まる前から俺はここでバイトしていたから、その頃からの知り合いだ。

そう言えば
合格を一番大げさに喜んでくれたのは、この人だったなあと思い出す。


「・・ちょっとね、友達を失くしちゃったかもしれなくて、落ち込んでたんだよ。」

「喧嘩したんだ?」

「・・う~ん。まあ、そんな感じ。」


バイト先の制服に着替えながら
俺は結局、話してしまう。

友達とかに自分の話をするのは苦手なのに
何でだろう
相葉さんには話してしまうんだよな。


「ニノは、案外不器用だからなあ。」


大きく伸びをしながら、相葉さんは言った。


「え、そう・・かなあ?」

「手先は器用で、いろいろ出来るくせに。」

「まあ、いろいろ出来ちゃいますよ。」


おどけて言った俺を無視して、相葉さんは考えこんでいる。

確かに手先が器用だと言われることが多いけど
何となくのコツを掴むのが早いだけだから、なかなか一定以上は上達しないんだよね。
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