O

「・・・かず。今日は帰んないで?」


腕の中のかずが愛おしくて
早く家に連れ帰って、思いっきり抱いてしまいたかった。

かずの全てを感じながら、好きだよってもう一度伝えたかった。


「うん。まあ、終電逃したから。」

「あ、そうなんだ?」

「家に電話するから、ちょっと待って。」


かずが急に普通のテンションに戻ってしまって、俺は少し拍子抜けした。

電話をかけている間、少し離れて待っていると
かずが大ちゃんの家に泊るからなんて、話している声が聞こえた。

あ、それ、言っちゃうんだ?

これからする事を思うと、ちょっと後ろめたいなあ。

今まで、気にした事なかったけどね。


「お待たせ。じゃ、行こうか。」

「・・・なんか俺ん家に泊るって知られてると、手出しづらいなあ。」

「ふははっ。今さら?」


かずが笑いながら言う。

確かに、今さらだ。

かずが俺の家に泊りに来た事は、何度もあるし
その度に、ぐったりするまで抱いた。

かずの家で無理矢理抱いたのも、まあ最近のような気がする。

だけどさ。

これから、ちゃんと付き合うとなると
いずれ、かずの母ちゃんに挨拶だってしないといけない訳だし

平気な顔で挨拶できるかなあ。

・・・なんて。

俺、何考えてるんだろう。

まだ付き合い始めたばかりなのに、もうずっと付き合っていくつもりでいる。

今まで付き合ってきた人達と同じように、数か月でかずと別れてしまうなんて
ホントあり得ないからね。


「うん。かずの母ちゃんに挨拶しなきゃって考えてた。」

「・・・あんた、馬鹿じゃないの?」


呆れたように、かずは言ったけど
その耳が赤く染まっているのを見て。

手を出しづらいなんて考えは、一瞬で吹き飛んだ。
2/2ページ
スキ