いつものように、大野さんが俺の家にやって来た。

いつもと違ったのは、その表情。

何か言いたそうで、思いつめたような表情を見て
俺に別れを告げに来たんだって、分かってしまった。


「・・・松本くん。俺・・・。」

「晩飯、もう出来るよ。」


大野さんは、玄関先で靴も脱がずに立ちすくんでいたけど
俺は気付かないフリをして、強引に部屋の中に招き入れた。


「今、麺茹でるから、座ってて？」

「・・・うん。」

「簡単な方法聞いたから、チャーシュー作ったんだよ。」

「・・・そうなんだ。」


俺はいつも以上に明るく振る舞って、大野さんが話を切り出すタイミングを奪う。

・・・分かってる。
分かってるけど

もう少しだけ、大野さんを見ていたい。

チャーシュー麺を平らげて、大野さんは箸を置いた。


「ごちそうさま。すごいウマかった。」

「良かった。」

「松本くん。俺・・・・。」


いつの間にか
俺を見つめる大野さんの目には、涙がいっぱい溜まっていた。

それは多分、これから俺を傷付ける事に対しての涙で

もう、それだけで十分だった。


「・・うん。別れよう。」


静かにそう告げると、大野さんは驚いたように俺を見た。


「どうして？」

「いいんだよ、もう。」

「でも・・・。」


俺は、ニノや相葉ちゃんの様子を見て、想像しただけで
本当の所、二人の間に何があったのかなんて知らない。

今さら知りたいとも思わない。

ただ分かったのは
大野さんは、ニノを選んだって事だけだ。


「・・・ニノを選んだんだろ？」

「・・・うん。」


小さな声で頷いた大野さんの目から、涙が一筋こぼれ落ちた。