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「大ちゃんのこと気になるなら、誘ってみれば?」

「え?」

「多分、すぐに寝てくれるよ。」

「何だよ、それ。」


ちょっとムッとしたように、潤くんは口を尖らせた。

いやいや、本当のことだから。

来る者拒まず、去る者追わず
大ちゃんは、まさしくそういう人だ。

付き合っている人がいてもいなくても、誘われれば寝る。
タチが悪いのは、本人にまったく悪気がないってこと。


「あの人、そういう常識ないから。」

「誰とでもヤルってこと?」

「まあ、そういうこと。」


俺の言葉に、潤くんはふうんって返事をして
それから、しばらく考えこんでいた。

あと少しで駅に着く頃、ポツリと潤くんが言った。


「お前も寝たのか?」

「知りたい?・・っていうか、それ知ってどうすんの?」

「いや、別に。どうするって訳じゃないけど。」


刺のある俺の言い方に、潤くんが困ったように頭を掻いた。

ごめんね、潤くん。

大学に入って、潤くんと友達になって
これからもっと仲良くなれるかもって思ってたんだけど。

俺にとっては、何より大ちゃんが一番大事なんだ。
だから、本当の事を話すだけで牽制できるなら、俺は恥ずかしくも何ともない。


「寝たよ。・・っていうか、さっきもあの部屋でヤッてたんだよね。」

「・・・そうか。」


直接的な俺の表現に、潤くんの顔が赤くなった。

こんな話、聞きたくないと思うけど
大ちゃんに手を出すななんて言える立場じゃないからさ。

そのせいで、潤くんが友達でいてくれなくなったとしても
それはそれで仕方ないって思うんだ。
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