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「翔くん、声がうわずってたよ。」


俺がクスクス笑っていると、翔くんは濡れたタオルを乱暴に俺の頬に押しつけた。


「イテテ。ごめんごめん。」

「・・智くん。もしかして、あの恐ろしく男前な人と付き合ってんの?」

「そうだよ。」

「うわぁ。そうなんだ。・・っていうかさ、何がどうなってんの?」


その言葉に俺は吹き出してしまった。

そりゃ、そうだ。

俺を殴った人がいて
俺と付き合ってる人がいて

何にも知らない翔くんには、訳が分かんない状況だよな。


「うん。まあ、俺が悪いんだけど。」

「それ位は分かるよ。」

「あ、ヒドイなあ。」

「智くんは、友達としては信用できるけど、恋人としては全く信用できないからね。」


翔くんは笑いながら、さらっと言った。

いやいや
もう自業自得なのは、分かってるから

付き合ってた人には、大体同じ事を言われるんだよね。

俺は簡単に今までの事を話した。

かずの事
松本くんの事
相葉ちゃんの事

昨日の事を話すと、翔くんは盛大なため息を付いた。


「はあ~・・・ホント最低な人だよね。」

「自分でも分かってるよ。」

「・・かずも変わってないんだな。」


ポツリと翔くんが呟いた。

同じ高校だったから、もちろん翔くんもかずの事を知っていて
何かと気にして、可愛がってくれていたみたいだけど

変わってないって、どういう意味だろう?


「それって・・・?」

「うん。まあ、俺が言う事じゃないから。」

「すごい気になるんだけど。」

「・・それより、自分の事だよ。」

「え、ああ。・・・うん。」


話の矛先が自分に向いてしまい、俺は気まずくなって俯いた。

翔くんは、そんな俺を見て優しく言った。


「かずが本命だと、俺はずっと思ってたんだけど。」

「それは違う・・と思う。」

「そう?だって、誰と付き合ったって、結局はかずの元に戻ってただろ?」

「・・・それは。」


そう言われれば、そうだけど

それは、俺に付き合ってる人がいない時にしか、かずが寝てくれなかったからで。

いや、でも

もし誰かと付き合っている時も、かずが寝てくれるんだったら

俺はずっと、かずを離さなかっただろうなって思う。


「本当に必要なのは誰なのか、ちゃんと考えた方がいいと思うんだよね。」


ゆっくりと俺を諭すように、翔くんは言った。

この後、一緒に飲みに行く予定だったんだけど
頬が腫れてきたのもあって、俺は大人しく家に帰る事にした。

本当に必要なのは誰なのか・・・。

家に帰ってからも、翔くんの言葉がいつまでも頭から離れなかった。
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