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次の日は、朝からソワソワしていた。

昨日の今日で、ニノが休んでいる事は気になっていたけど
正直、俺はそれ所ではなかった。

授業が終わると急ぎ足で家に帰り、晩飯の下ごしらえを始める。

19時と聞いていたのに、大野さんが来たのは30分も前だった。


「あれ、大野さん。早くないっすか?」

「うん。案外、早く着いた。」

「飯、もうちょっと待って下さいね?」

「ん。腹減らしてきた。」


興味深そうに、大野さんは台所を覗き込む。

簡単なパスタにスープ。
パスタの下ごしらえは済んでるから、最後に麺を茹でるとして
あとは、冷凍室にあった鶏肉を焼くんだっけ。

頭の中で献立を確認しながら、動く。

よほど腹が減っているのか、大野さんは指を咥えてフライパンの中身を見ている。


「はははっ。急ぐから、待って。」

「うん。すっげえウマそう。」


大急ぎで料理をし、テーブルに運ぶ。

大野さんはウマイウマイと連呼しながら、かなりの量を食べていた。

喜んでもらえたことに、俺はひと安心した。


「ごちそうさま。本当にウマかったよ。」

「良かった。」


満腹になってまったりしていると、やっぱりそういう雰囲気になる訳で

なんとなく肩が触れ合い、見つめ合って
どちらからともなく、唇を合わせる。


「・・・んっ・・・。」


俺は男とキスをするのは初めてだけど、この人のキスは本当に気持ちいい。

夢中になって理性が飛んでしまいそうになる。

ふと唇を離して、大野さんが言った。


「それでさあ。この前の質問なんだけど。」

「・・何の話?」

「松本くんは俺を抱きたいの?抱かれたいの?」

「ああ・・・。」

「俺、どっちでもいけるけど。」


ただでさえ経験豊富な大野さんに、少し引け目を感じているのに
どっちでもいけるなんて、そんな軽々しく言わないでほしい。

大野さんを抱くか、大野さんに抱かれるか。

う~ん。
自分が大野さんに抱かれるのは、想像が出来ない。
どんなに頑張っても・・無理かもしれない。


「・・・あの・・抱かせて下さい。」

「ん。分かった。」


二コリと微笑んだ大野さんは、いつも見せない色っぽい雰囲気を纏っていて
俺は今から始まる事に胸を高鳴らせた。
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