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今日は大野さんと付き合い始めてから、初めてニノを見かけた。

広い講堂で離れた場所に座っているのに、ニノの様子を窺ってしまう。

自分の気持ちを自覚してから、話をする機会はほとんど無くなってしまったから
何となく気まずくて

ニノから大野さんを奪ってしまったから
何となく後ろめたい。


その日の夜
バイトの休憩時間に携帯電話を見ると、大野さんから着信が入っていた。


「大野さん?電話くれました?」

「うん。バイト中?」

「今、休憩中だから大丈夫。何かありました?」

「・・・いや。かずにちゃんと話したから、一応言っとこうと思って。」

「え、本当に?」


確かに大野さんは、俺と付き合う事をニノに話すって言ってくれてたけど
こんなに早く話してくれるとは思わなかった。


「・・・うん。もうやめようって、言った。」


大野さんの声は、いつもより沈んでいるように聞こえた。

俺が嫉妬にかられて余計な事を言ったばかりに
何年も続いていたニノとの関係を、大野さんは終わりにするつもりだ。

俺が無理に言わせてしまったのかなって、少し心配になる。


「・・・大野さん、大丈夫?」

「何が?」

「いや・・何がって言う訳でもないんだけど。」

「・・・変なの。大丈夫だよ?」

「うん。じゃあ良かった。・・・今日、何時まで起きてます?」

「・・もう寝ようかと思ってたけど。」

「そっか。明日バイト休みなんですけど、会えないですか?」

「いいよ。夜、松本くん家に行っていい?」

「うん。飯作るから、一緒に食べましょう。」

「うん。」


大野さんとの電話を終えて、ふと思う。

ニノは泣いてるだろうな。

だけど
恋人の立場の俺としては
二人の関係が終わったっていう事は、喜ばしいことで

・・・ああ、俺って嫌な奴。

大野さんを好きだっていう気持ちは譲れないから、どうしようもないんだけど
ニノが泣いている姿が浮かんできて、自己嫌悪に陥ってしまった。
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