A

自分の気持ちを隠したまま、大ちゃんとの関係に縋ってきたニノの話を聞いて
たった一言、好きだって伝えればよかったのに
そうすれば4年もの間、その関係に苦しむことはなかったのに

その不器用で一途な想いが切なくて、涙が溢れてきた。


「・・何で、あんたが泣いてんだよ。」


俺を見て、呆れたようにニノは言った。


「あれ?おかしいな。・・泣くつもりはなかったんだけど。」

「・・・ったく、仕方ねえなあ。何で俺が相葉さんを慰めないといけないんだよ。」


面倒くさそうに呟いて、ニノは俺の頭を撫でる。

言葉とは裏腹にその手が優しくて
・・・俺、やっぱりニノが好きだ。

そう思った。

弱っている所につけ込むなんて真似したくなかったけど
今、自分の気持ちを伝えたかった。


「あ!」


突然、ニノが大きな声を上げた。


「何、何?どうしたの?」

「・・終電、逃した。」


頭を抱えて、ニノはソファに倒れ込んだ。


「だから、泊ればいいんだって。」

「なんか相葉さんの思惑通りになった気がして、嫌なんだけど。」

「何だよ。思惑通りって。」


口の悪いニノは、生意気で可愛くないけど
こうやってポンポン言いたい事を言い合えるのは、気持ちがいい。


「あのさ、ニノ。・・俺にしときなよ。」

「・・・同情して、そんな事言うもんじゃないよ。」

「同情じゃない。ずっと好きで、見てたんだ。」


真面目に言うと、ニノはやっと同情でも冗談でもないって分かったみたいだった。

何かを考えるように視線を泳がす。

ちょっと沈黙が辛いなと思い始めた頃
ニノは俺の様子を窺うように見て、言った。


「じゃあ、相葉さんと付き合うからさ。」

「え?」

「今すぐ、俺を抱けよ。」


ニノがどういう意図でそんな事を言っているのか分からなかったけど
そのキラキラした目に俺は釘付けになって、しばらく何も考えられなかった。
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