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その日は朝から嫌な予感がしていた。

遠くから潤くんが俺の様子を窺っていたし
大ちゃんから作業部屋に来てとメールも入っていた。

放課後、作業部屋に行くと
大ちゃんは真剣な表情で絵を描いていた。

誰も寄せつけない空気を纏っている大ちゃんは格好良くて
俺はしばらく入り口からその様子を眺めていた。

ふいにその空気が緩んで、大ちゃんが顔を上げた。


「・・いつからいたんだよ。声かけろよ。」

「さっきだよ。集中してるみたいだったから。」

「どうした?」


大ちゃんは、すっかり自分が呼び出した事を忘れているみたいだ。

何だ。
そんな大した用事じゃなかったのかな。

内心ビクビクしていた俺は、ホッとして息を吐いた。


「どうしたじゃねえよ。あんたが来いってメール寄越したんだろ。」

「・・・そうだった。」


用件を思い出した大ちゃんは、一瞬顔を顰めて沈黙した。

それは、どこから話せばいいのか迷ってるみたいな感じで

ああ、やっぱり嫌な予感は当たってたな

俺はそう思いながら、助け舟を出してやった。


「・・・潤くんと付き合うようになったんだ?」

「あれ、何で知ってんの?」

「まあ、何となく。」


俺の言葉に大ちゃんは、照れたような表情を浮かべた。

いつものことではあるんだけど
誰かと付き合うようになったっていう話を聞く度に
その幸せそうな顔を見る度に

心のどこかが壊れていくような感覚を覚える。


「じゃ、今は幸せなんだ?」

「うん。だからさ、かずも幸せになって?」


大ちゃんの口から、いつもとは違う言葉が発せられた。


「・・何、言ってんの?」

「もう4年になるよな?ずっと、かずに甘えてきた。」


大ちゃんが、俺との関係について話しているのは間違いなくて

頭では何を言いたいのか、大体分かったけど
心が理解したくないと拒否していた。


「もう、俺の事、待たなくていいから。」


きっぱりと決意した、それでいて優しい表情を浮かべて、大ちゃんは言った。
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