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「あ、適当に座って下さい。」

「うん。綺麗にしてるんだね。」

「いや、そうでもないっす。」


キョロキョロと辺りを見渡して、大野さんはソファに座った。

ソファに小さなテーブルにベッド。
コンパクトなワンルームだから、それだけで部屋の大半を占領している。

そこは、今まで生活していた場所なんだけど

大野さんがいる

それだけで、急にいつもの景色が違って見えた。


「はい。ビール。」

「ありがと。」


途中で買ってきたビールを大野さんに渡す。

やばい。
なんか緊張する。

とりあえず台所に逃げようとした時、大野さんに呼び止められた。


「松本くん。乾杯しようよ?」

「え、はい。」


大野さんの隣に座り、缶ビールを合わせる。

2人掛けのソファだから、いつもより距離が近い。

少し触れた腕から、大野さんの体温が感じられて
もう本当にどうしていいか分からないほど
ドキドキしてしまった。

俺って、いつもこんなだっけ?

今まで何人かの人と付き合ってきたけど
ここまで緊張するのは、初めてかもしれない。


「・・ねえってば。」


気が付くと、大野さんの顔がすぐ近くにあって

・・・え?

驚いて動けずにいると、頬に軽くキスをされた。


「・・・えっと?」

「すごい緊張してて、可愛いんだもん。」


大野さんは照れたように笑う。

その表情や仕草に、俺はもう感情を抑えられなかった。


「・・あんたの方が、何倍も可愛いって。」


少し強引かなとも思いながら
俺は大野さんの肩に腕を回し、唇を合わせた。
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