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生き残り

「ったく…
ちょっと待ってろぃ」
『?』

ララの言うあとでほど、当てにならないものはない。

マルコはそれを知っていた。

だからだろう。

彼は一瞬バスルームに消え、水に濡らしたハンドタオルを手に戻ってきた。

「ほら、冷やしとけよぃ」
『……ありがと』
「お前ェのあとでは信用ならねェんだよぃ」
『そんなこと…』
「あるんだよぃ」
『む…』

ララの言葉を遮るマルコに彼女は少し剥れる。

だが、それ以上の文句は言わない。

ララは彼に手渡されたハンドタオルを両目瞼に優しく当てた。

彼女の視界が暗闇に包まれる。

「冷やしたらよぃ…」
『ん?』
「島、ぶらつくかぃ?まだろくに見てねェだろ」
『あ、うん。行きたい』

ララは濡れたタオルに視界を奪われながらもマルコの誘いに頷いた。

ひんやりと水に濡れたタオルが時間経過で温くなり始めた時。

ララは瞼に当てていたタオルを外した。

少し眩しそうに彼女は目を細める。

「少しはマシになったねぃ」
『そう?』
「ああ」
『別に冷やさなくても平気だったのに…』
「あ?
何か言ったかぃ?」
『べつにー?なんでもない!』

ボソリ、とララが言った言葉をマルコは聞き逃さなかった。

彼は聞き返すが、そっぽを向かれてはぐらかされてしまう。

彼女はベッドから軽やかに降りて窓際に立つ。

丁度陽が沈みかけている頃。

オレンジ色の光が差し込む。

「……ぶらつくかぃ?」
『へ?』
「外」
『あ、うん。行く』
「行きてェとこはあるかぃ?」
『特にないけど…』
「?」
『一緒にお散歩したい』
「好きだねぃ」

ララは島に立ち寄ってもショッピングを楽しむ子ではなかった。

生活必需品を買いに店に立ち寄ったりするが、それはあくまで仕事。

非番の日には立ち寄らない。

彼女は島の街並みや人々の暮らしを眺めながら島を散策するのが好きだった。

『早く行こ!』
「わかったよぃ。
ついでにメシでも食うかねぃ」
『うん!』

ようやくララ本来の元気な笑顔が見れた。

ずっと翳りを見せていた彼女の表情から一変する。

一時、いつもの愛らしい笑顔を見せたこともあった。

だが、それはほんのわずかな時間だけ。

恐らく頭の片隅にずっとルイのことが過っていたからだろう。

だが、今はその片鱗すら見えない。

考えないようにしているだけかもしれないが。

『…マルコ?
行かないの?』
「!」

ぼんやりと部屋から出て行こうとするララの後ろ姿を眺めていたマルコ。

動こうとしない彼に彼女は不思議そうに首を傾げる。

マルコに歩み寄り、下から覗き込むようにララは彼を見つめた。

必然的に上目遣いになる。

「行くよぃ」
『…!…
…っ…わ…!』

マルコは近寄ってきたララを引き寄せ頭にそっと口付けた。

咄嗟のことで彼女は何も反応することができず、声を漏らす。

彼はそんなララを尻目にスタスタ、と平然とした表情で部屋を出ていった。


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