このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

生き残り

「泣きたきゃ泣けばいいよぃ。誰も見てねェ」
『…っ……!
…せっかく…会えたのにルイ兄…っ…
…っ……怖い顔して…違う人みたいに…』

泣けばいいというマルコの言葉にララは張ってた糸がプツン、と切れたように瞳から涙をボロボロ溢した。

その間、彼は相槌を打つだけで励ましの言葉をかけてやることもしない。

ただ背中をトントン、と優しく叩くだけ。

それが今の彼女には有り難かった。

溜め込んだ胸の内を吐き出せた。

「………」
『うゔぅぅ…!』

マルコは何も言葉をかけてやることが出来なかった。

どんな言葉を投げかけてもただの気休めにしかならない。

ただ静かに涙を流すララの小さな身体を優しく抱きしめることしか今の彼には出来なかったのだ。


—————
—————

『……スゥ…スゥ…』
「………寝ちまったか」

数十分、マルコの腕の中で泣き続けていたララだったが、泣き疲れたのだろう。

あどけない寝顔を浮かべていた。

彼女を起こさないようそっとララの身体を彼は抱き上げ、ベッドに横たわらせる。

起きる気配はない。

(…もうこれ以上はいいだろうがよぃ)

マルコはララの寝顔を見つめながら、彼女ばかり苦労していることに毒づいた。

そして何一つ手助けしてやれない自分にも。

幼い頃にララは一生分の悲劇を味わった。

これ以上の悲劇はあまりにも不公平だ。

なぜ彼女ばかりが苦労を強いられなければいけないのか、と。

神子だからと言われればそれまでなのだが、マルコはララの寝顔を尻目に表情を歪めた。

「……ちったぁ、頼れよぃ。
この馬鹿」

ララは人に頼るということを知らない。

自分で出来ることは全てやってしまう。

それは恋人であるマルコに対しても変わらない。

それが彼には悲しく感じていた。

彼女に聞こえないようボソリ、とマルコは呟く。

『…んぅ…』
「!」

寝返りを打ちながらララは声を漏らす。

起きてしまったのかと思ったが、まだ彼女は眠っている。

あどけなさがまだ残る寝顔。

身体は成長してもこういう所は変わらない。

マルコはララが目を覚ますまでの一、二時間傍らでその寝顔をずっと眺めていた。

目を細め、愛おしそうな眼差しで。

『……ん…
…ぁれ……』
「起きたかぃ」
『マルコ…』
「よく寝たねぃ」
『うん…わたし……』
「泣き疲れて寝ちまったんだよぃ。癖は治ってねェな」
『あはは…ごめん』

ふにゃり、とララは気の抜けた笑みを浮かべた。

マルコは彼女のそんな笑顔に気を緩めながらも、泣き腫れた右目目尻に一瞬触れる。

『?』
「少し腫れちまったねぃ」
『…そんなに?』
「いや、気にするほどじゃねェよぃ」
『じゃあ、いいや』
「一応、冷やしとけよぃ。悪化しちまう」
『あとででいい』

ララの瞼の腫れはそこまで酷くはなかった。

よく見れば赤くなっているが、近づかなければわからない。

マルコだから彼女の異変にすぐ気づいただけだろう。


.
9/13ページ
スキ