生き残り
『ありがと…』
「行くよぃ」
スタスタ、と大股で先を行くマルコの背中をララは追いかける。
向かう先は昨夜泊まったこの島で最上級の宿。
道中、二人の間に会話はない。
世間話をしている余裕など、今の彼女にはないのだろう。
「メシは?」
『へ?』
部屋に着くなりマルコは唐突に尋ねた。
ルイと別れてからずっとあの場所にいたので空腹を満たす機会はなかっただろう。
そもそも昼食をとる余裕がなかったのかもしれない。
「腹空かねェのかよぃ」
『……あんまり』
「軽く飯にするよぃ。
食わねェわけにはいかねェだろ」
『あ、うん…』
そう言ってマルコは部屋に置いてある電伝虫を手にとってフロントに繋げた。
ぶっきらぼうに軽食を部屋に持ってきてくれ、と告げる。
しばらく待てば部屋に食事が届くだろう。
「酒は?」
『え…あ…呑みたい』
ララはあまり昼間から酒を呑むことはない。
勧められれば口にするが、自ら手を差し伸べることはなかった。
だが、今の彼女は酒を欲している。
精神状態が不安定だからだろう。
「ほら。
呑めよぃ」
『…ありがと』
目の前に差し出されたウイスキーが注がれたグラス。
ララはそれを手にカラカラの喉を酒で潤した。
『………聞かないの?』
「あ?」
『さっきの話の続き』
「無理に聞くつもりはねェよぃ。
話したきゃ話せばいい」
マルコはこういう男だ。
恋人同士であっても言いたくないことの一つや二つ、あるだろう。
彼はそれを無理に問いただす趣味は持ち合わせていなかった。
例えその相手がララだったとしても。
『…ありがと』
「あ?
何がだよぃ」
『ううん。
……ルイ兄ね…』
「ん?」
『まだ私がちっちゃい頃、島で仲良くしてくれてた子なの』
「……生き残りかぃ」
『うん。ルイ兄のお父さんとお母さんが囮になって、逃げきれたみたい』
「………」
『私のせいで…』
「ララ」
マルコはララの言葉を遮るように彼女の名を呼んだ。
その表情は少し怒っているようにも窺える。
『え…
マルコ…?』
「何回も言ってんだろぃ。あれはお前ェのせいじゃねェ」
『でも…私がいなかったら島は…っ…!』
「いいか、ララ。
お前ェ生きていようがいまいが、あの島は政府に狙われてた」
『え…どうして…?』
「政府の協力要請に一族が応じなかったからだ。戦力にならねェ危険分子は排除する。それが政府のやり方だよぃ」
『………』
「神子が誰であろうとあの島はいずれああなってただろうよぃ。お前ェが責任感じることはねェ」
『……うん』
ララはシュン、と叱られた子犬のように項垂れた。
怒られた、と思っているのだろう。
マルコの表情が厳しい面持ちだからかもしれない。
彼からしたらそんなつもりは毛頭、ないのだが。
.
「行くよぃ」
スタスタ、と大股で先を行くマルコの背中をララは追いかける。
向かう先は昨夜泊まったこの島で最上級の宿。
道中、二人の間に会話はない。
世間話をしている余裕など、今の彼女にはないのだろう。
「メシは?」
『へ?』
部屋に着くなりマルコは唐突に尋ねた。
ルイと別れてからずっとあの場所にいたので空腹を満たす機会はなかっただろう。
そもそも昼食をとる余裕がなかったのかもしれない。
「腹空かねェのかよぃ」
『……あんまり』
「軽く飯にするよぃ。
食わねェわけにはいかねェだろ」
『あ、うん…』
そう言ってマルコは部屋に置いてある電伝虫を手にとってフロントに繋げた。
ぶっきらぼうに軽食を部屋に持ってきてくれ、と告げる。
しばらく待てば部屋に食事が届くだろう。
「酒は?」
『え…あ…呑みたい』
ララはあまり昼間から酒を呑むことはない。
勧められれば口にするが、自ら手を差し伸べることはなかった。
だが、今の彼女は酒を欲している。
精神状態が不安定だからだろう。
「ほら。
呑めよぃ」
『…ありがと』
目の前に差し出されたウイスキーが注がれたグラス。
ララはそれを手にカラカラの喉を酒で潤した。
『………聞かないの?』
「あ?」
『さっきの話の続き』
「無理に聞くつもりはねェよぃ。
話したきゃ話せばいい」
マルコはこういう男だ。
恋人同士であっても言いたくないことの一つや二つ、あるだろう。
彼はそれを無理に問いただす趣味は持ち合わせていなかった。
例えその相手がララだったとしても。
『…ありがと』
「あ?
何がだよぃ」
『ううん。
……ルイ兄ね…』
「ん?」
『まだ私がちっちゃい頃、島で仲良くしてくれてた子なの』
「……生き残りかぃ」
『うん。ルイ兄のお父さんとお母さんが囮になって、逃げきれたみたい』
「………」
『私のせいで…』
「ララ」
マルコはララの言葉を遮るように彼女の名を呼んだ。
その表情は少し怒っているようにも窺える。
『え…
マルコ…?』
「何回も言ってんだろぃ。あれはお前ェのせいじゃねェ」
『でも…私がいなかったら島は…っ…!』
「いいか、ララ。
お前ェ生きていようがいまいが、あの島は政府に狙われてた」
『え…どうして…?』
「政府の協力要請に一族が応じなかったからだ。戦力にならねェ危険分子は排除する。それが政府のやり方だよぃ」
『………』
「神子が誰であろうとあの島はいずれああなってただろうよぃ。お前ェが責任感じることはねェ」
『……うん』
ララはシュン、と叱られた子犬のように項垂れた。
怒られた、と思っているのだろう。
マルコの表情が厳しい面持ちだからかもしれない。
彼からしたらそんなつもりは毛頭、ないのだが。
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