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生き残り

『な…な…んで…
ルイ兄…が…
私、皆んな死んだと…』

ララは声を震わせながら途切れ途切れの言葉を発した。

大きな瞳からは溢れんばかりの涙が溜まっている。

彼女の視界は涙で歪んでいることだろう。

「………
…母さんと父さんが囮になって逃げれたんだ」
『…っ…!……ごめん…なさい…
私のせいで…』
「ララのせいじゃないだろ。

——生きててよかった…」

マルコは二人の会話を黙って傍らで聞いていた。

察しのいい彼は会話の内容だけで二人の関係を理解したよう。

マルコはそっと気づかれぬよう、その場を去る。

いつもならララを見知らぬ男と二人だけにするなどありえない。

だが、状況が状況だ。

数十年ぶりの再会で積もる話あるだろう。

自分がいては水を差してしまう、と。

「いいのか?」
『え?』
「連れ、行ったみたいだけど」
『あ…』

ララは後ろを振り向いた。

そこには居るはずのマルコがいない。

彼女はすぐに気を遣ってくれたのだと理解する。

『いいの。多分、気遣ってくれたんだと思う』
「……よく理解してんだな」
『え?』
「不死鳥だろ?あの男」
『!』

一瞬見ただけでルイはマルコの素性の検討はついていたよう。

なんら不思議なことはない。

彼の胸元にはでかでか、と白ひげの刺青が刻印されている。

誰が見ても一目瞭然だ。

『……うん。
私、今白ひげの船にいるから…』
「そうか。ララは…」
『?』
「…幸せか?」

ルイは思い出話に花を咲かせるわけでもなく、ただ一言ララにそう尋ねた。

幸せか、と。

なんとも彼女には答え辛い質問だった。

ララにはマルコや白ひげ、沢山の大人達が周りにいてくれたおかげで今日まで何不自由なく過ごせてこれた。

だが、ルイは違うだろう。

頼れる大人などいなかった筈だ。

彼女と一つしか変わらない彼が一人で生き抜くにはあまりに幼すぎる。

少なからず苦悩はあった筈だ。

そんなルイに対して呑気に幸せだ、と言える程ララは馬鹿ではない。

『……ごめん』
「別に謝って欲しいわけじゃない。ララには幸せでいてくれなきゃ困る」
『……どうして?』
「皆んなの死が浮かばれねぇだろ」
『………ねぇ、ルイ兄』
「ん?」
『一つ聞いていい?』
「ああ」
『なんで…スーツなの?』
「………」

スーツを着用する仕事はいくらでもある。

だが、ララにとって黒スーツ=世界政府というイメージが植え付けられていた。

だからだろう。

ルイのその服装に嫌な予感が拭えなかったのは。

彼女の表情は強張っていた。

「俺は今…
世界政府に身を置いてる」
『!』

静かにルイの声がララの耳に響いた。

どうやら彼女の悪い予感は見事、的中したよう。

こういう勘だけは昔から鋭い子だった。


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