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生き残り

『別にいいのに…』
「あ?」
『レティと一緒でも』

別の席へと去っていく二人の背中を見送りながらララは言った。

レティに良く思われていないことはもちろん、彼女も理解している。

少なからず気を遣う筈だ。

マルコはそれを配慮して同席を断ったのだが、当の本人はそれを理解していなかった。

「俺が嫌なんだよぃ」
『そんな邪険にしなくても…』
「……お前ェなァ…」
『?』
「人がいいのも大概にしろよぃ」
『へ?』
「……いや、いい」

マルコの気遣いに全く気づかないララに彼は呆れた。

レティが同席すれば、空気が悪くなるのは目に見えている。

それはわかっている筈だ。

それでも一緒でいい、と進言するのはあまりにも人が良すぎる。

だが、それはララらしくもあった。

自分には厳しいが、人にはとことん優しい。

彼女はそういう子だ。

「……もうすぐ」
『ん?』
「お前ェの誕生日だねぃ」
『え、ああ…うん。
そうだね』
「欲しいもんはあるかぃ?」
『別にないけど…』
「欲がねェなァ」
『…む』

あと数ヶ月もすればララは二十歳を迎える。

恋人同士になってから初めての誕生日。

マルコとしては何かを贈りたいのだろう。

だが、生憎彼女は物欲が皆無だ。

アクセサリーや宝石など光り物には興味を示さない。

物よりも夜の散歩に連れていった方がララは喜ぶだろう。

「…当日までに考えとけよぃ」
『え…』
「意義は認めねェ」
『なっ…!』

マルコは食後のコーヒーを啜りながら言った。

こうでもしなければララは物を強請らない。

絶句した彼女を彼は無視し続ける。

表情こそ不服そうにしているが、ララは抗議の声を上げなかった。

ただ黙々と少し冷えたホットサンドを食べている。

こういう時は何を言っても無駄だ、とわかっているからだろう。


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—————

カフェで朝のひと時を楽しんだララとマルコの二人は当初の目的だった湖に向かう。

街の外れを抜けて木々を掻きわけ、昨夜訪れた場所に再び足を踏み入れた。

人は誰もいないだろう。

そう二人は思っていたのだが、先客がいたようだ。

黒いスーツを身に纏った背の高い男性。

ララと同じ銀色の髪をしている。

「……ララ?」
『え……』

人の気配がしたからだろう。

男はララとマルコの方を向いて、開口一番彼女の名を呼んだ。

よく見れば、男はララと同じエメラルドグリーンの瞳をしている。

ということは、ステリア族ということになる。

だが、一族はあの日滅んだ筈。

そんなことあり得るはずない。

『………
…あ…!』
「思い出した?」

男は人懐っこそうな笑顔を浮かべる。

その顔にララは見覚えがあった。

幼い頃の記憶がみるみる蘇る。

『…ル…イ…兄…』

震えながらもララは彼の名を呼んだ。

ルイ。

それはまだ平和だった島暮らしの頃、よく彼女の世話を焼いてくれていた三つ年上の少年の名だった。


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