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レイク島

「……あの女か」
『!
知ってるの?ママのこと…」

記憶を引っ張り出してようやく何かを思い出したよう。

マルコは銀髪の女性に覚えがあった。

話したことはない。

ただ、見かけたことはある。

いつもロジャー海賊団の幹部達に囲まれていたのが、微かに彼の記憶に残っていた。

「いや、よくは知らねェよぃ。
ただ見かけたことがあるだけだ。当時、俺は下っぱだったからねぃ」
『そうなんだ…
パパがね、ママの話聞きたいならシャンクスに聞けって言っててそれで…』
「……(なるほどねぃ…)」

マルコはララの言おうとしていることがなんとなく、わかった。

要するに彼女はシャンクスに会いに行く許しを彼に得ようとしているのだろう。

普段なら許す筈がない。

だが、理由が理由だ。

断りにくい所がある。

「そんなに知りてェかぃ。母親のこと」
『だって私、ママのことなんにも知らないだもん』
「……」

当然だろう。

ララは産まれてすぐ、母親を失っている。

母親という存在がどういうものなのか知らない。

単純に自分を産んだ母親がどういった人物なのか知りたいのだろう。

「………ちゃんと仕事を終わらせてから行けよぃ」
『え……それって…』
「好きにしろぃ」
『……いいの?』
「ああ。
ただし、島を出航してからだ。いいな?」
『うん!ありがとう、マルコ!!』

ララは満面の笑みを溢してマルコに抱きついた。

こんな笑顔を見せられては断るものも断れまい。

敵わないな、といった表情で彼は彼女の細い身体を抱き留めた。

いい機会かもしれない。

マルコはそう思った。

常に彼と一緒だったララは外の世界のことを何も知らない。

無知は時に命を奪う危険もある。

最低限の知識は必要だ、と。

「赤髪には一報入れとくが、一緒には行けねェからな」
『大丈夫!シャルがいるから!』

シャルの背に乗って赤髪海賊団の拠点の島まで行くとなると一週間以上はかかるだろう。

その間、二人は離れ離れになる。

ララはそのことを理解しているのだろうか。

いや、していないだろう。

能天気な彼女が先のことを考えているとは思えない。

「そろそろ宿行くよぃ。いい加減、身体冷えちまう」
『はーい』

二人は立ち上がって湖を後にする。

夜風にあたってララの身体が冷えてしまわぬよう、マルコは羽織っていたシャツを彼女にかけてやった。

当然、彼は上半身裸になってしまう。

胸元の白ひげの刺青がよく目立つ。

行き交う人々の視線が二人に注がれる。

本人達は気にした様子もない。

いつものことなのだろう。


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—————

『わぁ…』

予約していた宿でチェックインを済ませ、二人は案内された部屋に足を踏み入れる。

キングサイズのベッド、簡易的なバーカウンター、宿泊するには充分な設備が整っている広々とした部屋だった。

正面は一面がガラス張りの大きな窓となっていて、夜景が一望出来る。

それなりに栄えている島だ。

夜には色鮮やかな光が島を彩る。

ホテルの最上階から見る景色は中々のものだろう。


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