レイク島

「………。
(…どうしたものかねぃ)」

リリィに釘を刺され、マルコは思案していた。

彼女は言うだけ言って彼の元を去っている。

「マルコ隊長!」
「………なんだよぃ」

そこへ、悩みの種のレティが屈託のない笑顔で駆け寄ってきた。

マルコは面倒臭そうにため息まじりでそちらに視線を向ける。

ララに対する態度とは正反対だ。

普通、こんなにもあからさまに態度が違ければ恋心も醒めそうなもの。

だが、レティはめげない。

ある意味強い子だ。

「あの…
今日の夜ってお暇ですか?一緒に…」
「悪いねぃ、先約がある」
「…っ…
副隊長とですか?」
「ああ」
「じゃあ、明日は…」
「おい」
「は、はい…?」
「仕事はどうしたよぃ。お前ェにも物資調達を任せたつもりだが?」
「あ……えっと…
副隊長が休んでいいって…」
「………。
あの馬鹿…」

マルコは頭を抱えた。

ララはいつもそうだ。

必要以上に仕事を抱える。

自分でやったほうが早い、という考えなのだろう。

だが、それでは彼女の負担があまりに大きすぎる。

だから彼はいつもララにある程度は下の奴等に任せろ、と煩く言っていた。

それが守られたことは数回しかないのだが。

「?
マルコ隊長?」
「………なんでもねェよぃ」
「あの…
今からでも手伝いに…」
「無駄だよぃ」
「え?」
「あいつは強情だからねぃ。理由つけて一人でやっちまうよぃ」
「……よく…
ご存知なんですね…」
「そりゃねぃ」

レティの表情は暗かった。

付き合いが長い分、ララとマルコは互いの行動が手に取るようにわかる。

それを目の当たりにした彼女は少し傷ついた様子だった。

自分に入り込む隙などない、と言われているように思えたのだろう。


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—————

一方その頃。

ララは船長室の前に立ってドアをノックしていた。

『パパ、入っていい…?』
「入れ」
『あの…お話があって』

おずおず、と遠慮がちにララは船長室に足を踏み入れた。

彼女がここに訪れることは滅多にない。

決して白ひげと話す機会が少ないとかそういうわけでない。

甲板に彼がいれば笑顔で駆け寄って他愛ない話を交わす。

ただ単に船長室に用がないだけ。

それだけだ。

「珍しいじゃねェか、チビスケ」
『うん。パパとお話したくて…』
「話?」
『マルコから聞いてると思うけど、私ね…
………その…マルコと…』
「………」

照れ臭いのだろう。

ララはごにょごにょ、と口籠もってその先の言葉が出てこなかった。

察しのいい白ひげは彼女が何を言おうとしているのかすぐ理解する。

「…仲良くやってるみてェじゃねェか。マルコと」
『へ?
ぁ…うん』
「話はそれだけか」
『………怒らないの?』
「グララララ、娘を怒鳴りつけるほど落ちぶれちゃいねェ」

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