上陸前夜
「ほらよぃ」
『ありがと』
ぶっきらぼうに渡された酒の入ったグラス。
ララの酒の好みを知っているので純米酒ではなく、熟成されて渋い色をしたウイスキーが注がれていた。
「わかってるとは思うが…」
『?』
「明日の物資調達、一人で行くなよぃ」
『一人でも平気だよ?モビーに届けてもらうし』
「そういうことを言ってんじゃねェよぃ、この馬鹿」
『あだっ…!』
色気のない声が彼女の口から発せられる。
綺麗なその表情が一瞬、歪んだ。
「ただでさえお前ェは目立つんだから厄介事に巻き込まれんだろぃ」
『そんなこと…』
「なかった試しがあるかぃ?」
『………』
ララの銀髪とエメラルドグリーンの綺麗な瞳、人並み外れたその美しい美貌は人目を引く。
悪い虫がつかぬようにマルコはいつも彼女一人で島を出歩かせない。
ビスタやイゾウなど、自分が付き添えない時は手の空いてる者を側につかせる。
ララはそれが子供扱いされているようで嫌だった。
だからいつもこうして無駄な抵抗をする。
却下されるのがオチなのだが。
「明日の夜は空けとけよぃ?」
『うん…?』
「見せたい場所がある」
『?
見せたい場所?』
数日前にマルコは偵察の為、クルー達より一足先に島を訪れていた。
島の治安の悪さや地形はだいたい把握している。
いつもならばララも宝珠探しの為、同行していたはず。
だが今回彼女は、溜まった書類が多すぎて共に行く事はしなかった。
だからマルコ以外、上陸する島の情報は知らない。
「明日のお楽しみだよぃ」
『ふーん…?
春島だっけ?』
「ああ。治安はあまりよくねェがな」
『そうなの?』
「カジノがあるからな。海賊やガラの悪い連中が多い」
『カジノかぁ…』
「立ち寄るなよぃ」
『わかってるって。興味ないもん』
「そうかぃ」
ララは金や光り物に関心がなかった。
服にも興味がなく、最低限のものしか持っていない。
見兼ねたマルコやビスタが女性らしい、他所行き用の服を買ってあげている。
「せっかくのデートだ。ちゃんとめかし込んで来いよぃ」
『が…がんばる…』
「楽しみにしてるよぃ」
(リリィに手伝ってもらお)
ララは自分でお洒落を楽しむことはなく、いつもリリィやイゾウにされるがままにされる。
まるで着せ替え人形のように。
彼女が頼めば喜んで引き受けてくれるだろう。
二人はその後ちびちび、と酒を嗜みながら時を過ごした。
恋人同士の夜らしい一夜ではなかったが、マルコは満足げだった。
こんなにもゆっくりと二人で過ごした夜は久しい。
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『ありがと』
ぶっきらぼうに渡された酒の入ったグラス。
ララの酒の好みを知っているので純米酒ではなく、熟成されて渋い色をしたウイスキーが注がれていた。
「わかってるとは思うが…」
『?』
「明日の物資調達、一人で行くなよぃ」
『一人でも平気だよ?モビーに届けてもらうし』
「そういうことを言ってんじゃねェよぃ、この馬鹿」
『あだっ…!』
色気のない声が彼女の口から発せられる。
綺麗なその表情が一瞬、歪んだ。
「ただでさえお前ェは目立つんだから厄介事に巻き込まれんだろぃ」
『そんなこと…』
「なかった試しがあるかぃ?」
『………』
ララの銀髪とエメラルドグリーンの綺麗な瞳、人並み外れたその美しい美貌は人目を引く。
悪い虫がつかぬようにマルコはいつも彼女一人で島を出歩かせない。
ビスタやイゾウなど、自分が付き添えない時は手の空いてる者を側につかせる。
ララはそれが子供扱いされているようで嫌だった。
だからいつもこうして無駄な抵抗をする。
却下されるのがオチなのだが。
「明日の夜は空けとけよぃ?」
『うん…?』
「見せたい場所がある」
『?
見せたい場所?』
数日前にマルコは偵察の為、クルー達より一足先に島を訪れていた。
島の治安の悪さや地形はだいたい把握している。
いつもならばララも宝珠探しの為、同行していたはず。
だが今回彼女は、溜まった書類が多すぎて共に行く事はしなかった。
だからマルコ以外、上陸する島の情報は知らない。
「明日のお楽しみだよぃ」
『ふーん…?
春島だっけ?』
「ああ。治安はあまりよくねェがな」
『そうなの?』
「カジノがあるからな。海賊やガラの悪い連中が多い」
『カジノかぁ…』
「立ち寄るなよぃ」
『わかってるって。興味ないもん』
「そうかぃ」
ララは金や光り物に関心がなかった。
服にも興味がなく、最低限のものしか持っていない。
見兼ねたマルコやビスタが女性らしい、他所行き用の服を買ってあげている。
「せっかくのデートだ。ちゃんとめかし込んで来いよぃ」
『が…がんばる…』
「楽しみにしてるよぃ」
(リリィに手伝ってもらお)
ララは自分でお洒落を楽しむことはなく、いつもリリィやイゾウにされるがままにされる。
まるで着せ替え人形のように。
彼女が頼めば喜んで引き受けてくれるだろう。
二人はその後ちびちび、と酒を嗜みながら時を過ごした。
恋人同士の夜らしい一夜ではなかったが、マルコは満足げだった。
こんなにもゆっくりと二人で過ごした夜は久しい。
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