上陸前夜
「別に俺は色気のある女が好きなわけじゃねェよぃ。
ララだから惚れたんだ」
『…っ…』
マルコは恥ずかしげもなく、真っ直ぐな瞳でララを捉えて言った。
彼女はその眼差しに耐えられず、視線を逸らす。
「わかったかぃ?」
『ぅ…ん…』
「不安にさせて悪かったねぃ」
『なんで……』
「わかるよぃ。何年一緒にいると思ってんだ」
ララが不安に思っていたのは確かだった。
マルコの周りには大人の女性がいつも言い寄っているのを目にしていたのだろう。
二人の関係を知っても尚、彼に好意を抱いているレティの存在も大きいのかもしれない。
自分よりもマルコに相応しい女性は沢山いる、と。
だから彼女は尋ねたのだ。
どうして自分なのか、と。
「安心したいよぃ」
『え?』
「ちゃんと好いてくれてるみてェで。無理に言わせちまったとこがあったからねぃ」
『そんなこと…』
お互い不安な気持ちがあったようだ。
忙しさでゆっくり話す時間もなかったのが原因だろう。
だからマルコは二人で宿に泊まりたかったのだ。
ゆっくり二人で話せる時間が欲しくて。
ララとマルコの二人はその後、抱き合ったまま他愛ない話をして時を過ごした。
どちらからともなく瞼が重くなり、空が闇に包まれるまで二人は眠りにつく。
次に彼女が目を覚ましたのはクルー達が寝静まった真夜中のことだった。
—————
—————
『…ん… ………?
あれ…』
「起きたかぃ」
ララが目を覚ますとマルコはすでに起きていた。
彼女のデスクで分厚い本を読んでいたが、ララが身体を起こしたことで視線をそちらに向ける。
パタン、と本を閉じながら。
『寝ちゃってた…』
「ぐっすり寝てたねぃ」
『マルコも寝た?』
「ああ、少しねぃ。
腹減っただろ」
『……うん。空いた』
お昼に昼食を食べてからララは一口も食事を口にしていない。
腹が空くのは当然だ。
彼女は眠たい目を擦りながらマルコを見上げる。
「サッチが軽食作ってくれたよぃ。食うだろ?」
『…ん…。
食べる』
二人掛け用のソファーの傍らにある小さなガラステーブルの上に白い布がかけられた皿が置いてあった。
マルコは視線だけそちらに向けてララに食べろ、と目で訴える。
サッチが作ってくれた食事だ。
『マルコはもう食べたの?』
「ああ。流石にねぃ」
ララが目を覚ますまでマルコは夕飯を食べずに待とうとしていた。
だが、一向に彼女は目を覚さない。
気持ちよさそうに眠っているララを叩き起こせる程、彼は酷ではなかった。
彼女はソファーに腰掛け、皿にかけられた布を剥ぎ取る。
そこには彩りのある野菜を挟んだサンドイッチが乗せられていた。
寝起きのララには丁度いい量だ。
「いただきます…」
ぼーっとしながらも行儀よく、手を合わせてからララはサンドイッチを口にした。
もごもご、と口を動かしながら黙々と食べている。
その間、二人は一言も言葉を交わすことはなかった。
マルコは読みかけていた本にまた手を伸ばす。
.
ララだから惚れたんだ」
『…っ…』
マルコは恥ずかしげもなく、真っ直ぐな瞳でララを捉えて言った。
彼女はその眼差しに耐えられず、視線を逸らす。
「わかったかぃ?」
『ぅ…ん…』
「不安にさせて悪かったねぃ」
『なんで……』
「わかるよぃ。何年一緒にいると思ってんだ」
ララが不安に思っていたのは確かだった。
マルコの周りには大人の女性がいつも言い寄っているのを目にしていたのだろう。
二人の関係を知っても尚、彼に好意を抱いているレティの存在も大きいのかもしれない。
自分よりもマルコに相応しい女性は沢山いる、と。
だから彼女は尋ねたのだ。
どうして自分なのか、と。
「安心したいよぃ」
『え?』
「ちゃんと好いてくれてるみてェで。無理に言わせちまったとこがあったからねぃ」
『そんなこと…』
お互い不安な気持ちがあったようだ。
忙しさでゆっくり話す時間もなかったのが原因だろう。
だからマルコは二人で宿に泊まりたかったのだ。
ゆっくり二人で話せる時間が欲しくて。
ララとマルコの二人はその後、抱き合ったまま他愛ない話をして時を過ごした。
どちらからともなく瞼が重くなり、空が闇に包まれるまで二人は眠りにつく。
次に彼女が目を覚ましたのはクルー達が寝静まった真夜中のことだった。
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『…ん… ………?
あれ…』
「起きたかぃ」
ララが目を覚ますとマルコはすでに起きていた。
彼女のデスクで分厚い本を読んでいたが、ララが身体を起こしたことで視線をそちらに向ける。
パタン、と本を閉じながら。
『寝ちゃってた…』
「ぐっすり寝てたねぃ」
『マルコも寝た?』
「ああ、少しねぃ。
腹減っただろ」
『……うん。空いた』
お昼に昼食を食べてからララは一口も食事を口にしていない。
腹が空くのは当然だ。
彼女は眠たい目を擦りながらマルコを見上げる。
「サッチが軽食作ってくれたよぃ。食うだろ?」
『…ん…。
食べる』
二人掛け用のソファーの傍らにある小さなガラステーブルの上に白い布がかけられた皿が置いてあった。
マルコは視線だけそちらに向けてララに食べろ、と目で訴える。
サッチが作ってくれた食事だ。
『マルコはもう食べたの?』
「ああ。流石にねぃ」
ララが目を覚ますまでマルコは夕飯を食べずに待とうとしていた。
だが、一向に彼女は目を覚さない。
気持ちよさそうに眠っているララを叩き起こせる程、彼は酷ではなかった。
彼女はソファーに腰掛け、皿にかけられた布を剥ぎ取る。
そこには彩りのある野菜を挟んだサンドイッチが乗せられていた。
寝起きのララには丁度いい量だ。
「いただきます…」
ぼーっとしながらも行儀よく、手を合わせてからララはサンドイッチを口にした。
もごもご、と口を動かしながら黙々と食べている。
その間、二人は一言も言葉を交わすことはなかった。
マルコは読みかけていた本にまた手を伸ばす。
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