上陸前夜
「…腹減ったかぃ?」
『へ?
別に空いてないけど…』
「じゃ、ちょっと寝かせてもらうよぃ」
そう言ってマルコはごろん、と唐突にララのベッドに寝転がった。
頭の後ろで腕を組んで目を瞑っている。
彼女は困惑した表情でちょこん、とその傍らに控えめに座った。
「お前ェは寝ねェのかよぃ」
『だって眠くないし』
「こいよぃ」
『わっ…!』
マルコは逞しいその腕でララを強引に抱き寄せた。
彼の腕の中にまた収まった彼女は胸を高鳴らせる。
この甘い雰囲気に慣れるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
「いい匂いがするねぃ」
『そうなの?
自分じゃよくわかんないけど…』
「花の香りがするよぃ」
『……?
なんにもつけてないよ』
「じゃ、ララの体臭が花の香りなんだねぃ」
『なにそれ。そんなわけないじゃん』
ララは目を細めて可笑しそうに笑った。
コロコロ、と歌うように。
『マルコはいつも海の匂いがする』
「そりゃそうだろぃ。船で生活してんだから」
『この匂い好き』
「そうかよぃ」
『うん』
ララはマルコの胸に頬擦りした。
その姿は飼い主に甘える猫のようで思わず彼は表情を綻ばせる。
自然と彼女の頭に手が伸び、骨ばったその大きな手でララの頭を撫でた。
「……懐かしいよぃ」
『え?』
「お前ェのガキん頃はこうやって寝かしつけてた」
『そうだっけ?覚えてないや』
「そりゃ、お前ェはガキだったからねぃ。覚えてるわけねェさ」
『マルコは…』
「ん?」
『……なんで私なの?』
「なんだよぃ、なんでってのは」
『だって私より綺麗なお姉様いっぱいいるじゃん。
サッチが言ってたよ。マルコはモテるって』
「あの馬鹿…。
余計なこと吹き込みやがって…」
確かにマルコがモテるというのは間違っていない。
島に立ち寄った酒場や娼館では彼にすり寄る女達は少なくないのは彼自身、自覚している。
ただそれは白ひげ海賊団一番隊隊長という肩書きに群がっているに過ぎない。
マルコはそう思っていた。
だれも彼自身を見ている女など誰一人いないのだ。
「あいつの話を鵜呑みにすんじゃねェよぃ、馬鹿」
『!
あだっ…!』
マルコは指先でララの額を弾く。
色気のない声が彼女の口から漏れる。
『いたい…』
「誰にモテようが興味ねェよぃ。ララにしか眼中にねェ。
だからサッチの言葉なんざ気にすんな」
『別に気にしてるわけじゃないよ。ただ…』
「?」
『なんで私なのかなって思っただけ』
「なんでねェ…」
『だって私リリィみたいに色気ないし』
リリィというのはこの船に乗船しているナースの名だ。
ララが幼い頃から医務室にいる古株のナースである。
出るとこはでている、スタイル抜群で妙に色気のある女性。
ナースの中で唯一、気を許せるのが彼女だ。
ララは姉のように慕っている。
.
『へ?
別に空いてないけど…』
「じゃ、ちょっと寝かせてもらうよぃ」
そう言ってマルコはごろん、と唐突にララのベッドに寝転がった。
頭の後ろで腕を組んで目を瞑っている。
彼女は困惑した表情でちょこん、とその傍らに控えめに座った。
「お前ェは寝ねェのかよぃ」
『だって眠くないし』
「こいよぃ」
『わっ…!』
マルコは逞しいその腕でララを強引に抱き寄せた。
彼の腕の中にまた収まった彼女は胸を高鳴らせる。
この甘い雰囲気に慣れるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
「いい匂いがするねぃ」
『そうなの?
自分じゃよくわかんないけど…』
「花の香りがするよぃ」
『……?
なんにもつけてないよ』
「じゃ、ララの体臭が花の香りなんだねぃ」
『なにそれ。そんなわけないじゃん』
ララは目を細めて可笑しそうに笑った。
コロコロ、と歌うように。
『マルコはいつも海の匂いがする』
「そりゃそうだろぃ。船で生活してんだから」
『この匂い好き』
「そうかよぃ」
『うん』
ララはマルコの胸に頬擦りした。
その姿は飼い主に甘える猫のようで思わず彼は表情を綻ばせる。
自然と彼女の頭に手が伸び、骨ばったその大きな手でララの頭を撫でた。
「……懐かしいよぃ」
『え?』
「お前ェのガキん頃はこうやって寝かしつけてた」
『そうだっけ?覚えてないや』
「そりゃ、お前ェはガキだったからねぃ。覚えてるわけねェさ」
『マルコは…』
「ん?」
『……なんで私なの?』
「なんだよぃ、なんでってのは」
『だって私より綺麗なお姉様いっぱいいるじゃん。
サッチが言ってたよ。マルコはモテるって』
「あの馬鹿…。
余計なこと吹き込みやがって…」
確かにマルコがモテるというのは間違っていない。
島に立ち寄った酒場や娼館では彼にすり寄る女達は少なくないのは彼自身、自覚している。
ただそれは白ひげ海賊団一番隊隊長という肩書きに群がっているに過ぎない。
マルコはそう思っていた。
だれも彼自身を見ている女など誰一人いないのだ。
「あいつの話を鵜呑みにすんじゃねェよぃ、馬鹿」
『!
あだっ…!』
マルコは指先でララの額を弾く。
色気のない声が彼女の口から漏れる。
『いたい…』
「誰にモテようが興味ねェよぃ。ララにしか眼中にねェ。
だからサッチの言葉なんざ気にすんな」
『別に気にしてるわけじゃないよ。ただ…』
「?」
『なんで私なのかなって思っただけ』
「なんでねェ…」
『だって私リリィみたいに色気ないし』
リリィというのはこの船に乗船しているナースの名だ。
ララが幼い頃から医務室にいる古株のナースである。
出るとこはでている、スタイル抜群で妙に色気のある女性。
ナースの中で唯一、気を許せるのが彼女だ。
ララは姉のように慕っている。
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