上陸前夜
『そんな心配してないもん』
「のわりには顔が強張ってるよぃ」
『そ…それは…』
「………。
俺はただララと一緒に居てェだけだよぃ」
『?
いつも一緒にいるよ?』
「一緒だが、二人ではねェだろぃ。邪魔が入る」
『邪魔って…』
要するにマルコは二人の時間が欲しかったわけだ。
子供のように拗ねた発言にララは意外そうに少し、目を見開く。
彼らしくない発言だ。
それもそうだろう。
船にいればお互い仕事がある。
二人の時間は中々取れない。
夜の限られた時間しか。
ようやくお互いの気持ちが通じ合ったというのにこれでは、不満に思うのは当然だろう。
「で?」
『え?』
「どうするんだよぃ?泊まるのか泊らねェのかはっきりしろ」
『えっと…。
一緒に泊り…たい…です』
「なんで敬語になるんだよぃ」
『だ…だって…!』
雰囲気に呑まれ、ララは思わず敬語で頷いてしまったよう。
未だ慣れないのだろう。
緊張したように身体を縮こませている。
その様子にマルコは笑みを溢した。
当人は必死なのだろうが、側から見れば愛らしくて仕方がない。
「楽しみにしてろぃ。最高の宿に泊まらせてやる」
『?
…最高?』
「明日になればわかるよぃ」
『ふーん…?』
言葉通りならば、最高の宿とは高級な宿泊施設のことを指しているのだろう。
マルコにはそれだけの財力がある。
ララはその最高、の意味を理解していないよう。
きょとん、と首を傾げて彼を見上げている。
「お前ェはもう仕事、終わったのかよぃ?」
『うん。今日の分はね』
「俺んとこに来てねェんだかなァ…?」
『あ!
出すの忘れてた……』
「ったく…。
部屋にあるのかよぃ?」
『うん。デスクの上に』
「取り行くよぃ」
『はーい』
ララはマルコの言葉に素直に頷いて立ち上がった。
彼はスタスタ、と先を歩いて稽古場を出ていく。
慌てて彼女はその背中を追う。
二人肩を並べてララの自室へと向かった。
道中、外の景色に目をやると夕陽が海に沈みかけている時だった。
オレンジ色の光が二人を照らす。
『きれい…』
「そうだねぃ…」
思わずララは足を止めて、目の前に広がる夕陽を眺めた。
オレンジ色の優しい光が彼女の銀髪を照らして美しく輝く。
マルコはその輝きに目を奪われつつ、ララの輝く銀髪をひと束掬って手に取った。
「お前ェは…」
『ん?』
「何色にも染まるねぃ」
『?
そう…?よくわかんないけど…』
純粋なララは周りの環境によっては善にも悪にも染まる。
このまま恋人同士の関係が続けば、彼女は少なからずマルコの色に染まっていくだろう。
男としてそれは大変喜ばしいことではある。
だが、世の中の嫌われ者の自分色に染めてララは幸せなのだろうか。
マルコの頭にそんな考えが一瞬、よぎる。
最も、自分以外の色に染まっていく彼女など彼が許す筈もないのだが。
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「のわりには顔が強張ってるよぃ」
『そ…それは…』
「………。
俺はただララと一緒に居てェだけだよぃ」
『?
いつも一緒にいるよ?』
「一緒だが、二人ではねェだろぃ。邪魔が入る」
『邪魔って…』
要するにマルコは二人の時間が欲しかったわけだ。
子供のように拗ねた発言にララは意外そうに少し、目を見開く。
彼らしくない発言だ。
それもそうだろう。
船にいればお互い仕事がある。
二人の時間は中々取れない。
夜の限られた時間しか。
ようやくお互いの気持ちが通じ合ったというのにこれでは、不満に思うのは当然だろう。
「で?」
『え?』
「どうするんだよぃ?泊まるのか泊らねェのかはっきりしろ」
『えっと…。
一緒に泊り…たい…です』
「なんで敬語になるんだよぃ」
『だ…だって…!』
雰囲気に呑まれ、ララは思わず敬語で頷いてしまったよう。
未だ慣れないのだろう。
緊張したように身体を縮こませている。
その様子にマルコは笑みを溢した。
当人は必死なのだろうが、側から見れば愛らしくて仕方がない。
「楽しみにしてろぃ。最高の宿に泊まらせてやる」
『?
…最高?』
「明日になればわかるよぃ」
『ふーん…?』
言葉通りならば、最高の宿とは高級な宿泊施設のことを指しているのだろう。
マルコにはそれだけの財力がある。
ララはその最高、の意味を理解していないよう。
きょとん、と首を傾げて彼を見上げている。
「お前ェはもう仕事、終わったのかよぃ?」
『うん。今日の分はね』
「俺んとこに来てねェんだかなァ…?」
『あ!
出すの忘れてた……』
「ったく…。
部屋にあるのかよぃ?」
『うん。デスクの上に』
「取り行くよぃ」
『はーい』
ララはマルコの言葉に素直に頷いて立ち上がった。
彼はスタスタ、と先を歩いて稽古場を出ていく。
慌てて彼女はその背中を追う。
二人肩を並べてララの自室へと向かった。
道中、外の景色に目をやると夕陽が海に沈みかけている時だった。
オレンジ色の光が二人を照らす。
『きれい…』
「そうだねぃ…」
思わずララは足を止めて、目の前に広がる夕陽を眺めた。
オレンジ色の優しい光が彼女の銀髪を照らして美しく輝く。
マルコはその輝きに目を奪われつつ、ララの輝く銀髪をひと束掬って手に取った。
「お前ェは…」
『ん?』
「何色にも染まるねぃ」
『?
そう…?よくわかんないけど…』
純粋なララは周りの環境によっては善にも悪にも染まる。
このまま恋人同士の関係が続けば、彼女は少なからずマルコの色に染まっていくだろう。
男としてそれは大変喜ばしいことではある。
だが、世の中の嫌われ者の自分色に染めてララは幸せなのだろうか。
マルコの頭にそんな考えが一瞬、よぎる。
最も、自分以外の色に染まっていく彼女など彼が許す筈もないのだが。
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