想い

「安心しろぃ。すぐとって食いやしねェ」
『なっ…!!』
「食って欲しいんなら別だがねェ」
『!
ばか!!』

マルコの言葉にララは赤面しながら言葉を失い、彼の胸元を軽く叩いた。

非力な彼女の力ではマルコの身体はビクともしない。

「ララ」
『…なに?』
「俺は口下手だし、甘い言葉もかけてやる自信はねェ。苦労をかけることも多いはずだがよぃ、これだけは約束する」
『?
マルコ…?』

マルコはララに視線を向けながら優しい眼差しで言った。

彼が夜の散歩に誘ったのは、彼女と二人で話をしたかったからだった。

モビー•ディック号でも二人で話す時間を取れなくはない。

だが、どうしても邪魔が入ってしまう。

ゆっくり話す時間がマルコには欲しかったのだ。

「この身がどうなろうと俺はお前を守るよぃ。だから…

側にいてくれるかぃ?」

真っ直ぐな強い言葉だった。

冷たい夜風が二人の頬を撫でる。

『私はマルコの側じゃなきゃやだよ…
マルコじゃないといや』

ララはマルコの気持ちに応えるかのように、彼のシャツを掴んで見上げながら言った。

上目がちなその視線はマルコを欲情させたが、ぐっとそこは堪える。

彼は優しく彼女の身を引き寄せ、自分の腕の中にその小さな身体を収めた。

「……オヤジに言わなきゃだよぃ」
『パパ、怒るかな…?』
「お前ェには怒らねェさ」
『には?』
「ま、ゲンコツの一発は覚悟して行くよぃ」
『私も一緒に行く!!』
「お前ェはいいんだよぃ」

ララを激愛している白ひげには二人の関係を話さなければならない。

一番信頼しているマルコが相手なのだから、祝福はしてくれるだろう。

それでも一発は殴られるに違いない、と彼は思っていた。

白ひげにとって彼女は大事な娘だ。

当然だろう。

『どうして?』
「オヤジに報告するのは俺のケジメだ。お前ェには必要ねェんだよぃ」
『けじめ?
……よくわかんない』
「知らなくていいんだよぃ」
『ふーん…?』

それ以上ララは何も言わなかった。

二人はしばらく黙って抱き合っていたが、どちらからともなく身体を離す。

そして照れ臭そうに彼女ははにかむ。

マルコはそんなララの頭を引き寄せて、額に優しく口付けた。

「帰るか」
『もう?』
「今度ゆっくり時間、作ってやるよぃ。まだ仕事、残ってんだ」
『あ……。
私もやんなきゃだ。今日なんもしてない』
「今日はいいつっただろぃ」
『でも明日が辛くなっちゃうから…』
「……ったく。
一緒にやるかぃ?」
『…いいの?』
「ああ。構わねェよぃ」

基本的に書類仕事は自室で各自、黙々とやることが多い。

マルコが書類仕事をしている時はララも部屋には寄りつかないようにしていた。

彼の邪魔にはなりたくなかったから。

今までマルコが一緒に仕事をしよう、などと彼女を誘った事など一度もない。

だからララは少し驚いたように目を見開く。


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