想い
「ララ。
そろそろ行くよぃ」
『あ…うん!
サッチにご馳走様してくる!』
エースとララが微笑み合う姿を見て、マルコは少し妬いたのだろう。
急かすように彼女に言った。
食事を終えた後、いつもララはサッチや厨房にいるクルー達に感謝の言葉を述べる。
誰に言われたわけでもないが、気づいた時には自発的にそれを行なっていた。
海賊に育てられた子とは到底思えない。
食べ終わった食器を抱えて厨房へと駆けていく彼女の姿をマルコとエースは見送った。
そしてララはすぐに戻ってくる。
『お待たせ!』
「すぐ行くかぃ?」
『うーんと…
お風呂だけ入ってきていい?』
「湯冷めするよぃ」
『いーの!』
「……さっさと行ってこい」
『はーい!
エース、またね』
「あ、ああ…」
ララは笑顔でエースに別れを告げて、食堂を去っていく。
呆気にとられる彼を置き去りにして。
夜の散歩に向かう際、彼女はいつも入浴してラフな格好に着替える。
いつでも寝れる状態に。
特別な理由があるわけではない。
だが、それがララの散歩へ行く前のルーティンだった。
『マルコ!』
ララがマルコの元に戻って来たのはその一時間後だった。
甲板で本を読みながら待っていた彼が気怠るげな目で彼女を見つめる。
「……遅ェんだよぃ」
『あはは…ごめん。長湯しちゃった』
「ったく…
行くか」
『うん!!』
マルコは分厚い本をパタン、と音を立てて閉じた。
そしてその本を甲板の床にそっとおく。
散歩から戻ってきて、この本がなくなることはないだろう。
この船で本を読む者など、ララと彼しかいない。
字を書くことさえ、危うい者達ばかりなのだから。
「しっかり捕まってろよぃ?」
『はーい』
ララはマルコの背中にしがみついて笑顔で頷いた。
不死鳥化した彼は静かに空へと旅立つ。
満天の星空を揺らめく炎の蒼が飛び回る。
目的地はない。
あてもなく、夜空を駆け回るだけ。
ただそれだけなのに、彼女の表情は終始笑顔だった。
どんな煌びやかな装飾品を贈ろうとも、こんな表情は見せない。
マルコの背に乗って飛び回っているこの瞬間だけは、瞳をキラキラ輝かせて子供のようにはしゃぐ。
何回も子供の頃から彼の背に乗って飛び回っているというのに、この表情は変わらない。
「お前ェはいつも嬉しそうにするねェ」
『だって嬉しいもん!』
「そりゃ、乗せた甲斐があるよぃ」
翼を羽ばたかせ、空を飛びながらマルコは言った。
そして目に止まった小さな小島に向かってゆっくりと速度を落とし、島に上陸する。
島に人の気配はない。
静寂が二人を包み込む。
『ねぇ』
「ん?」
『今日、なんで誘ってくれたの?』
「嫌だったかぃ?」
『嬉しいよ。けど…』
「?」
『マルコが誘ってくれるなんて初めてだったから…』
「そりゃ、今までお前は妹だったからねェ。テメェの女と家族は違ェよぃ」
『…女…』
ララはまだ実感が湧かないのだろう。
自分がマルコの女になったということに。
それが何を意味するのかさえ。
.
そろそろ行くよぃ」
『あ…うん!
サッチにご馳走様してくる!』
エースとララが微笑み合う姿を見て、マルコは少し妬いたのだろう。
急かすように彼女に言った。
食事を終えた後、いつもララはサッチや厨房にいるクルー達に感謝の言葉を述べる。
誰に言われたわけでもないが、気づいた時には自発的にそれを行なっていた。
海賊に育てられた子とは到底思えない。
食べ終わった食器を抱えて厨房へと駆けていく彼女の姿をマルコとエースは見送った。
そしてララはすぐに戻ってくる。
『お待たせ!』
「すぐ行くかぃ?」
『うーんと…
お風呂だけ入ってきていい?』
「湯冷めするよぃ」
『いーの!』
「……さっさと行ってこい」
『はーい!
エース、またね』
「あ、ああ…」
ララは笑顔でエースに別れを告げて、食堂を去っていく。
呆気にとられる彼を置き去りにして。
夜の散歩に向かう際、彼女はいつも入浴してラフな格好に着替える。
いつでも寝れる状態に。
特別な理由があるわけではない。
だが、それがララの散歩へ行く前のルーティンだった。
『マルコ!』
ララがマルコの元に戻って来たのはその一時間後だった。
甲板で本を読みながら待っていた彼が気怠るげな目で彼女を見つめる。
「……遅ェんだよぃ」
『あはは…ごめん。長湯しちゃった』
「ったく…
行くか」
『うん!!』
マルコは分厚い本をパタン、と音を立てて閉じた。
そしてその本を甲板の床にそっとおく。
散歩から戻ってきて、この本がなくなることはないだろう。
この船で本を読む者など、ララと彼しかいない。
字を書くことさえ、危うい者達ばかりなのだから。
「しっかり捕まってろよぃ?」
『はーい』
ララはマルコの背中にしがみついて笑顔で頷いた。
不死鳥化した彼は静かに空へと旅立つ。
満天の星空を揺らめく炎の蒼が飛び回る。
目的地はない。
あてもなく、夜空を駆け回るだけ。
ただそれだけなのに、彼女の表情は終始笑顔だった。
どんな煌びやかな装飾品を贈ろうとも、こんな表情は見せない。
マルコの背に乗って飛び回っているこの瞬間だけは、瞳をキラキラ輝かせて子供のようにはしゃぐ。
何回も子供の頃から彼の背に乗って飛び回っているというのに、この表情は変わらない。
「お前ェはいつも嬉しそうにするねェ」
『だって嬉しいもん!』
「そりゃ、乗せた甲斐があるよぃ」
翼を羽ばたかせ、空を飛びながらマルコは言った。
そして目に止まった小さな小島に向かってゆっくりと速度を落とし、島に上陸する。
島に人の気配はない。
静寂が二人を包み込む。
『ねぇ』
「ん?」
『今日、なんで誘ってくれたの?』
「嫌だったかぃ?」
『嬉しいよ。けど…』
「?」
『マルコが誘ってくれるなんて初めてだったから…』
「そりゃ、今までお前は妹だったからねェ。テメェの女と家族は違ェよぃ」
『…女…』
ララはまだ実感が湧かないのだろう。
自分がマルコの女になったということに。
それが何を意味するのかさえ。
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